岩井の本棚 「マンガにでてくる食べ物」 第39回

手のかかるティーンたち


(図1)

前回も取り上げた「ミニレディー百科 たのしいクッキング」。
ナポリタン作るには、あえてスパゲティの規定のゆで時間を無視し、 麺がグダグダになるまでゆでれ、とレクチャーしている本です。

既にぼくはティーンではないですが、この本の発行年度を考えると、 まあ僕らの世代が子供の頃に読んでてもおかしくない。一歩間違えば僕もこの本読んでクッキングしたかもしれないわけです。 それが気になって、ちょっと読んでみました。

まず気になったのは、当時のティーンにとってこれははたしてオシャレだったのか、という部分ですね。
あんまし料理が得意じゃない女の子、まあ小学校5・6年くらいだとしますか。

その子がふとしたことで料理をしないといけなくなる。 たぶん友達どうしでハイキングにでも行くときの弁当だとか、男の子に弁当を作ってあげたり、お誕生会の料理かもしれない。
それを意識したのかピクニック料理のコーナーがあるのですが、なんとも冴えない料理ばかりです。


(図2)

たとえば「牛肉の細切りと野菜炒め」。
他には「しらたき入り肉そぼろ」。
お母さんが得意そうな料理ではあるけれど、彩には欠けてないですかね。

特に「しらたき」が良くない。お誕生会にしらたきは並ばないよなあ。
うちの親父はしらたきとタラコを炒り煮したやつが大好きですが、しらたきとか好きなのは中年以降だよ。若さのカケラもないですね。

で、こういう女子向けクッキングガイドにはパーティ用料理で必ずカナッペがのってるんですよね。

オシャレな料理の代表で、ほらクラッカーにチーズとか乗っけたやつ。この本にもやっぱりありまして、 でもなんかよくみると彩りが悪い(図1)。なんだコレ? なに乗ってるんだ?とページをめくると・・・。
  • のりを大さじ1ずつぬる(図2)
ギャーーッ!!
何か黒いと思ったら「ごはんですよ」かよ! あまじょっぱいカナッペだなー。 手巻き寿司からの発想か? 図2のキュウリの斬新な盛り付けにも注目ですね。


(図3)

あと聞いたことがない料理も多いです。 パーティ料理編では「ビスケットケーキ」と称した食べ物があるのですが材料欄にまず

あま味のすくないビスケット(60まい)

とあるのに仰天。
他に何を使うんだ、と見ても牛乳、ホイップ、チョコレートだけ。
頭の中でこれらの材料でどうしたらケーキになるのかを考えて、まさかね、そんなことはないよねと思いつつページをめくると・・・。

  • あたためた牛乳の中へビスケットを一枚ずつ、さっとつけて並べる
  • ビスケットに静かにホイップクリームを塗る(図3)
並べたビスケットにクリーム塗っただけかよ! 60枚も! チョコレートは溶かしてクリームの上に文字を書くだけのものでした! そんなのはケーキといわないです。これがケーキになるんだったら、 ヤマザキのロールケーキだって贈答用に使えるはずですよ!


(図4)


(図5)


(図7)

あと「コンビーフのフライ」。これも聞いたことがない。

作り方的にはとんかつの肉の部分をコンビーフにしただけのものですが、 コンビーフって冷えてると硬いけれど、熱を加えると脂ダラダラになるんですよ。 それを揚げるなんて。さぞかしギトギトだったろうと思います。

で材料は、と見てみると

用意するもの(4人分) コンビーフのかんづめ(1かん)(図4)

少ないなー。ひとり一枚っきゃないですよ。
ナポリタンのときも麺がひとりあたり75グラムしかなかったし、昔のティーンは小食だったんですね。

料理経験が薄いティーンだから仕方ないとは思うのですけれど、それにしても過保護すぎます。
これが料理か、と思うものも少なくありません。

たとえばハムエッグの作り方。
油を引いてハムをいため、その上にたまご乗っけて焼く。

これだけです。こんなのに2ページもさく必要ないよ。昔のティーンはハムエッグの完成写真をみても作り方がわからず、 うっかりハムを茹でてみたり、たまごを脱水機にかけたりしちゃったんだろうか。ありえませんね。

ミルクセーキのつくりかたにいたってはこれです(図5)


(図6)


(図8)

実質ひとコマで作業が終了しちゃいましたよ! でももっともっと不穏なのがコーラフロート。

アレ? コーラフロート、っていっても、 アイスもコーラも手を加えるところないんじゃない? と思った貴兄。

正解はこれです(図6)。

ひねりねーな! 入れるだけかよ! せめてアイスを球状にする努力くらいしようよ!

かといってひねったら変なものを作ってしまうこともあるから厄介です。オレンジソーダの作り方に描いてある材料は
  • オレンジジュース
  • 牛乳
  • 炭酸水
牛乳? 嫌な予感が・・・。

(1)オレンジジュースに牛乳を加えて泡だて器で混ぜる(図7)

あーあ。やっちゃったよ・・・何でそのままオレンジジュースを炭酸水で割る、以上にムダに手をかけたりするんだろ。泡立てなくていいよ。
卵+オロナミンCのオロナミンセーキに匹敵する悪意ですね。

しかもオレンジソーダにアイスクリームを浮かべ、そこにさらにバナナやリンゴ、 イチゴをうかべるとパフェが出来ます(図8)、って描いてあるけれど、 いや、それはパフェじゃないとおもうな・・・パフェ食べたら舌の先が炭酸でピリピリ来る、ってありえないもん。

でもまあ、カラーページのこの写真を見たら全て許す気になりましたね。だってこんなファンタやスプライトの缶(図9)、見たことないよ? それだけ昔の話だったんです。じゃあ仕方ないかなーって。


(図9)

・・・と思って、別装丁のものの奥付を見たら昭和60年発行の30刷。おいおい、バブルの来る数年前までこれ発行してたの!? スパゲティのゆで時間も15分のままだし!! すげえな小学館!

と、ツッコミどころ多数の児童書。
リーズナブルな値段で札幌店にたくさん出してます! 札幌のティーンはこれを読んでさあレッツ・クッキング!

※この記事は2006年2月11日に掲載したものです。

(担当岩井)

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