岩井の本棚 「マンガにでてくる食べ物」 第18回

のび太と家出とカップラーメンとその肉

皆さん家出ってしたことありますか。
たいていは進学や就職を機に、家族とはなれることはあるのですが、それ以前に家出をしたことあるひとは少ないかと思います。
夏休みになるとウカれた家出女子たちが渋谷や新宿に集まってきて、多くは補導されるのですが、 補導されなかったヒトたちは金を稼ぐために、いずれよくない性産業に従事してゴニョゴニョ…となったり、 よくないスケスケビデオに出演してゴニョゴニョ…となったり、一夜の宿を得るためにゴニョゴニョ…となるのですが、 病院の闇を描いた「ブラックジャックによろしく」の今のエピソードでも、家出少女がそういったゴニョゴニョした経緯で心に闇を抱いて入院するハメになっていました。
家出なんてするもんじゃないですね。

僕の友達でも定住する家を持たず、群馬県から鳥取県までの友達の家を、もう7年も転々としている子がいますが、こういうのは放浪者というべきで家出には値しない気がします。


(図1)
そんな中、日本屈指のダメこどものび太くんが数回にわたり家出を企て、実行していたことをご存知でしょうか。
しかもそのうち一回はなんと10年間にも及ぶ、もはや失踪と呼ぶべき大規模な家出をしていたことを!(図1・てんとう虫コミックス14巻)

のび太くんの場合は0点とったりしてママにしかられて「もう誰にもしかられたくない!」みたいな感じで家出をするのですが、 決まって「しゅくだいやらなくちゃ」「6時から見たいテレビがある」などと言い出すあたり、決心の鈍さが露呈しています。
10年間の家出のときにもよりによって無人島でひとりで生活しようとしたから誰も見つけ出せずに10年たってしまったのです(ドラちゃんの道具をもってしても行方が十年間わからなかった、というのは納得できないのですが)。


(図2)


(図3)
それにしてもその10年間、のび太がいないのにドラえもんは野比家に居候していたのでしょうか? さぞかし居心地悪かっただろうと同情します。

そんなのび太くんは家出の際にいつも風呂敷に荷物を包んで飛び出していくのですが、毎回毎回カップラーメンを持っていっています(図2・図3てんとう虫コミックス15巻、25巻、32巻)。
カップラーメンとインスタントラーメンは貧乏人(それも料理ができない独身男性)の友とされていますが、調理しないでお湯だけで食える、ことにのび太は着目しているのでしょう。
食べるときもハシでなくフォークで食べるあたり本格派です(図4)。
ちなみにカップヌードルは当初から海外での需要を考えてフォークで食べれるようになってるんですよ。
なのでコンビニでカップヌードル(日清のに限る)を買った際には店員は「フォークつけますか」と聞くべきなんでしょうが、まだ一回もそう問われたことはありません。


(図4)
しかしカップヌードルでもカップスターでもホットヌードルでもそうですが、縦長系ヌードルには必ず肉状の四角いヤツが入ってますよね。みなさんアレどう対処してますか?

ちなみに僕は何かを残す、のがイヤなので、食べつつも「まずいなあ」と思っている…のが実情ですが、結構うまいと思っている人もまた多いです。
僕的にはかみ締めたときに出てくる肉汁がエグい感じがして苦手です。
うちの姉はスープにあの味が移るのがイヤだという理由でエビも肉もお湯を入れる前に全撤去していました。

しかし味以外でも、あの肉にはさまざまなウワサがあり、それが食べるのを躊躇させていたのは間違いありません。以下肉ウワサです。

その1。
カップヌードルのフタには「豚肉」と記されてますが、昔は「畜肉」と記されてました。
それでうちの親父が「この畜肉、というのはだな、ウサギの肉だ」と吹き込んだのです。
今ではウサギも食べんのアリだろくらいには思ってますが、小学生のころ中庭でウサギ飼ってましてね、やっぱりアレを食べるのはどうなのか…と子供心にも切なかったです。
ちなみに当時、畜肉、と記されていれば馬、ウサギの穏やかな言い方だったという事実もあります。

その2。
小学校4年のころクラスでイモリを飼っていまして、そのエサが乾燥糸ミミズでした。
ところがそれの大きさといい、形状といい、1センチ角のサイコロ状といい、そっくりだったのです!
早速クラス中に「カップヌードルの肉は糸ミミズ」と広まってしまいました。

その3。
マク○ナルドのハンバーガーはミミズで作られてる…のうわさが広まったとき。
ハンバーガーのパテを何もつけずに食べると、カップヌードルの肉の味そっくりだ…アレもミミズだ…と中学校でもウワサに。

以上3点ですが、もちろんすべてデマです。
実際には大豆加工物にビーフエキスを加えたもの、という話です。
しかしこれだけ子供のころから語られてきて、いまだ姿を変えずに残っている、というのは面白いと思いませんか。

たとえばカレーヌードルのジャガイモはいつの間にか四角くなくなっているのに、肉に関しては味も形もバージョンアップが一切なしです。
根強いファンがいるのでしょう…と思ったら久住昌之氏と泉晴紀氏の対談で(掲載誌失念)、 久住氏が「そういえば泉くんカップヌードルの肉すきだよね」と何気にきいたところ泉氏は「アレはアレでしか食べれないから好きなんだよ!」と反発されてました。

確かにアレの代用品、というのはない。
本来が肉の代用なのに、アレの代わりにきちんとした肉を持ってこられても成り立たないのです。
ホントに不思議な食べ物です。

余談ですが、ミミズで思い出したのですが、4年位前のムツゴロウ特集で、ムツゴロウ氏が南米の大ミミズに会いに行く! といって、 やっとの思いで大ミミズを探し当て「かわいくなってますねえ、いいですねぇ」を、例のホトケみたいな笑顔で触りまくっていたのですが、 CM明けるといきなりフライパンでそのミミズを炒めて食ってました!
さっきかわいいっていった直後にもう炒めて食べる。
しかも「うん、ホントにおいしいですねぇ」などと微笑みながら!
ぼく一人暮らしなんですが、ミミズ炒めみたときは確か声に出して「エエーーッッ!!」と驚いた覚えがあります。

ムツさんのことを僕らは動物を愛する人のいいおじさん、だと油断していたかもしれません。
たぶんホントはもっと闇の深い、ビザールでアナーキーでとんだスカトロなのかもしれませんよ。

※この記事は2004年9月3日に掲載したものです。
(担当 岩井)

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