岩井の本棚 「マンガにでてくる食べ物」 第14回 |
「追悼中島らも・ごはんとおかず、とは」
すでに2週間以上前の話なんですが、中島らもさんが亡くなりましたね。中島らもさんといえばコピーライターから始まってテレビ、ラジオ、小説、劇団の 主催者・・・と多岐にわたる活躍をされていたのですが、関西のかまぼこメーカー である「かねてつ」の広告「啓蒙かまぼこ新聞」を担当していたことがあります。
今でも思い出すのですが、当時この連載・・・というか広告は「ぴあ」と「宝島」の2誌に掲載されていました。
ぴあはともかく当時の宝島、というと、現在のようなオヤジ雑誌ではなく、バンドブームに乗っかった音楽雑誌。
それもサブカルよりのかなり尖った雑誌でした。
かまぼこメーカーの広告なのにかまぼこのことにほとんど触れていないというなげやりなこの連載を見て、まだ中学生だった僕は、なんだかえらくパンキッシュな人だと仰天したものです。
また中島節で語られる大阪、関西というのがひどく無秩序でアナーキーな都市に思えてきたのです。
中島さんも晩年はラリリだと本人も明かしていたし、周囲もなんとなくそれについて温和に触れるような触れないような、という大人の関係だったのですが、大麻で結局つかまっちゃいました。
しかし、ラリリだとみんながわかっていてそれでいて、これだけ長くお目こぼしを受けてきた人もいないような気がします。
この人のラリリは大麻、アルコール、ブロンに眠剤、と何でもやってましたしね。
あれ?このページってマンガに出てきた食べ物のコーナーじゃなかったっけ?と思った方もいるかもしれませんが、この「啓蒙かまぼこ新聞」には初期、中島らもさんがマンガを描いていました・・・。
このキャラクターを見たことがある人も多いのではないですか?(図1)また中島さん自身「酒とつまみ」という雑誌を作ってみたり、安い酒を飲める店をめぐり「せんべろ探偵が行く」という本 を出してみたり、「全日本まずいもの愛好連盟」というマズイたべものを報告しあう会を作ってみたり、とかなり食べ物に対しての興味があったようです。
それでは、中島らもさんが今までの著作で触れてきた食べ物のエピソードをちょっと紹介してみましょう。
- 若いころ、兵庫の垂水で、何を頼んでもぐちゃぐちゃに煮崩れたおでんしか出てこないおでん屋に入ったことがある。
- 金がなく、飲み屋にいっては納豆と酒のみ頼み、しかも3人で一粒ひとつぶ納豆のまわし食いをした。
- ラジオ収録時に、あまりに腹が減りすぎて腹がなった。恥ずかしいので黙っていたら後に「霊の声が収録された」と話題になった。
- 初めて酒を飲んだのは修学旅行のとき。つまみが何もないのでパイナップルをさかなにして飲んだ。
- 子供のころ貧乏で、父親が「今日は大いにキャベツを食べよう」といって、キャベツしか具のないナベを食べさせられたことがある。
- 新世界の飲み屋にはいったらも一行。串かつや煮込みという定番のつまみに挟まれ「メロン」というつまみを見て仰天。生ハムメロンではなく、純粋にメロンをつまみにして飲むのは新世界ではあたりまえ。
・・などなど。
とにかくこういったエピソードには事欠かない人なので、どの著作を読んでもネタだらけです。
(図2)
カレーライスをおかずにするのは禁じ手だろう、という内容ですが(図2)なにをもっておかずと定義すればよいのでしょう?
主食と副食のとりあわせって、大事ですよね。
ちなみに僕が行ったことがある、もしくは見た、きいたことがあるおかずの微妙なパターン、食い合わせの悪そうな献立を以下に列挙します。
- ざる蕎麦とごはん
- うなぎとパン
- チャーハンと半ライス
- きゅうりとしらたきとごはん
- 玄米に大根のカレー
- カレーヌードルとくらげの酢の物とあんドーナツ
- コーヒーと茶碗蒸しとトースト
- お好み焼きとごはん
かけそばとご飯ならばラーメンライスと同様に食べれる気がしますが、冷たい蕎 麦をすすったあとに温かいご飯、はやはりマズかった。炭水化物しかなく、体に有 効な栄養分ゼロです。
うなぎとパン、は某スタッフが行った例。脂ぎっていて甘いものとパン、が可能ならばマックでウナギバーガーが出来ていてもよいはず。
常人ならばたぶん酔う。
チャーハンと半ライス、は以前住んでいた熊谷市の中華料理屋でメニューに普通にのっていた。
ご飯は箸で食べ、チャーハンはレンゲで食うのに不思議を感じずに食べれるか否かが問われるあたり。
きゅうりとしらたきとごはん、は自分が、2年前ダイエット時に行ったメニュー。
今となってはそのころ病んでたんだなあとしか言いようがない暗黒の無塩分の組み合わせ。 玄米にカレー、は自然食品系のレストランで発見。
カレーで煮込まれた大根を想像したところ胃酸が逆流したので未食。
カレーヌードル・・・は友達が普通に食べていた。辛い、すっぱい、甘いの三つを交互に食べ続けるのを見て尊敬の念が。
最後のは名古屋のモーニングメニューで実際にあったとものの本に。
コーヒー用と茶碗蒸し用でスプーンが1個しかない、というのもキツいです。
最後のお好み焼きとごはん、は関西ではごくポピュラーな組み合わせであることを知りつつ記しました。
粉ものをおかずにごはん、は関東以北ではめったにやらないです。
余談ですが、5年前にプロレス好きのスタッフ清水氏と大阪店に出張に行ったときのこと。
ダウンタウンの番組で触れられた、ご飯とお好み焼きのみのセット「お好み定食」が食べたい!と熱望され、二人で夜の闇を徘徊しましたが、結局食べれずじまいでした。
結果お好み焼きとライスを別々で注文したのですが、お好み定食、と名前がついてないとダメなんだ!とずいぶんゴネられムズかられた記憶があります。
何でまたそんな部分でゴネたのか。そのことを一回とっくりとひざを交えて語り合いたいです。
そんなわけで、僕にとっての大阪とは「お好み定食」に振り回された印象しかありません中島らもさんのかねてつでの仕事をまとめたエッセイ集「啓蒙かまぼこ新聞」「微笑家族」は本店2にて在庫がただいまあります。興味のある方はどうぞ。
※この記事は2004年8月16日に掲載したものです。
(担当 岩井)
(担当 岩井)