岩井の本棚 「マンガにでてくる食べ物」 第1回

セミのてんぷら

このコーナーでは、古今東西のマンガに出てくるふしぎな食べ物や、謎の食べ物を取り上げてみたいと思います。
マンガに出てくる食べ物、って、印象に残るものがなんかおおいですよね。
骨付きの肉を「マンガの肉」などと呼称するように、マンガならではのデフォルメされた姿が一般に伝わっているものも多々ありますし。
そんなマンガに出てきたもので、僕が妙にひっかかっているものをここでは紹介していきます。

で、第1回は「セミのてんぷら」。
出典はますむらひろし「アタゴオル物語」(朝日ソノラマサンコミックス5巻)。
この物語は猫と人間が共存するふしぎな世界・アタゴオルの物語。猫は人間みたいに二本足で歩くし、人間と話すことも出来ます。

で、そういう世界だからネコ用の食堂、があるんですよね。そういったネコ食堂で出すメニューの一つが、この「セミ天定食」です。
えっ!? セミ? てんぷら? と驚く方もいるかもしれませんが、何だかこれがすごくうまそうなんですよ!
揚げたてのセミがコロモまとってホカホカしてる、しかもこれはフォークで食うらしい、食べた人は「うーめーっ!」と叫ぶほどうまいらしい。
作中では「最近のセミは薄味でねえ その点去年風鈴森で捕まえた猫ゼミは脂っこくていい味してますよ」とあります。
いくつかの虫食い本であたると、セミは
  • 可食部は胴体。羽と頭は食わない
  • 火であぶって食べる。あぶるとアブラがにじみ出る
とあるのですが、肝心の味は「まずい」「意外と美味しい」とバラバラでした。
じゃあおまえ食べれるか、ときかれたら、難しいですねえ。揚げた状態で羽と足がついていたらパスですが、羽と足がなかったらあんまり気にせず食べると思います。

実家でもネコ飼ってましたが、ネコはセミ好きですよね。
食べはしないんだけれど、捕まえてきて、必ず見せにきます。
そして見ろといわんばかりに足で突っついたりします。

ネコはなぜ、捕まえた獲物をすぐには食べずに、買主の本に持ってくるのか?は色々な人が疑問に思っているらしく、ネコ好きのあいだではけっこう話題になりますが、宮沢章夫さんの本で披露された「ネコ、養い親説」には度肝を抜かれました。

ネコは自分が一家の主だと思っているらしく、われわれの元に小鳥やムシを捕まえては「これでも食べろ」とほどこしているのだ、われわれはネコに養われているのだ、という説です。
ところが一見奇抜なこの説も、ネコを飼っていると思い当たるフシがあって、思わず納得してしまいます。


余談ですが、ますむらひろし先生は「王様手帳」というパチンコ屋で配ってる業界紙でもエッセイを連載してまして、その小冊子はパチンコのくぎ調整とかパーラー情報ばかりなんですが、ますむら先生はそんなカタギじゃない世界におもねる事無く、毎回宮沢賢治とサッカーの話しかしません。

同じく4コマを連載している蛭子能収でさえパチンコのマンガを描いているのに、まったく迎合しないますむら先生は(ものすごく浮いてるんですけど)やはり男ですねぇ。

※この記事は2004年6月23日に掲載したものです。

(担当 岩井)

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