岩井の本棚 「マンガけもの道」 第32回

マッチョだよーーッ! パンク!パンクパンクーッ!のその後とアゴなしゲン

ヤングマガジンには特別な思い入れがあります。
これは僕が地方出身者だからということにも無関係ではない気がします。

僕の出身中学は当時は不良とヤンキーだらけでして、中学校の思い出といえば不審火で用務員室が燃えたり、
中庭掃除をしていると3Fから上級生が牛乳瓶を投げつけてきたり机を落としてきたり、
あまりに中履きが盗まれるからといった理由で全員靴を家に持って帰るというルールだったり、
同級生が暴走族に拉致されたり、朝登校すると教室中の机の上にクレンザーが大量にまかれていたり、
お祭りとなるとなぜか知人が露店の店番をしてたりと、まあかなりなヤサグレ具合でした。
そういえばこれは不良とは関係ないけど遠足にいったときにバスがおばあさんを轢いたこともあったなあ。

その当時はまだビーバップハイスクールが連載中で、ヤンキーたちに大人気。
僕はぜんぜんヤンキーではなかったのですが、やっぱり流れでヤンマガを読み始め、多感な時期にハロルド作石、安達哲、望月峯太郎に古谷実に触れたのが決定的でした。

もちろん今でも読み続けており、ジャンプ、スピリッツやヤンサンはまったく読むのをやめた時期がありますが、ヤンマガは断線なく20年以上読んでいます。 そう、最近の復刻ラインナップを見るに、講談社BOXの中の人とは話が合いそうな気もしなくもない・・・そんなマンガ歴です。

そんな中学を出てやがて社会に出たあと、久しぶりに友人の家に遊びに行くと、どの部屋にも必ず最新のヤンマガが置いてあった。
ヤンマガというとクルマ。クルママンガつながりでもう一回ヤンマガを読みはじめる友人もまた多かったんです。
クルマがないと生活できない地方に住んでて、社会に出るや車のローンを組むのが当たり前で、 付き合ってる女の子が男の乗ってるクルマがどこの何CCの何ドアのナニだと間違いなくスラスラいえるような生活だと、ヤンマガとは切っても切れない縁ができてしまうんですね。
だって僕、バレーボーイズの赤木や宮本なんて家族のように心配して行く末見てますよ。谷口の脚の病気は大丈夫なのか?って。再発しないのか?って。

というわけで今日も習慣で読みつつ「仲村みうの目つきは怖いなあー」なんて思ってたわけですが、「アゴなしゲンとオレ物語」のトコでビックリ。ナニって、このコマですよ。


こりゃ「マッチョだよーーッ!!」こと「マッチョテイスト」じゃないですか!!
やってくれましたね平本アキラ先生!!

ちなみにこれが元ネタです。
お月にホレてるチコと、チィちゃんにホレてるお月がそれぞれの想いから暴走しだし取り乱したところを、 それでもマッチョかよ!とチィちゃんがバイクに担いでガケからジャンプ・・・この話の転ばせ方もオチもまったくの予想のつかなさが、毎回のコトながらすばらしすぎます。 けっこうみんな長いこと読んでるから麻痺しているけど、平本先生の話の先の読めなさってまちがいなく天才的ですよ?

もうひとつスゴいのがパロディのつかい方。

ちょっと前にアゴゲンでも「孤独のグルメ」パロを2回出してきたけど、 そのうちの一回は「がんばれフトシ!フトシ!」とアゴゲンキャラがみんなでチアガールになって応援しまくる・・・という引用の仕方でビックリしたことがあります。
孤独のグルメっつたらいくらでもほかにパロディ引用できるシーンはあるにもかかわらず(「うぉオン」でも「関節技」でも「煮込み雑炊」でも「シューマイ弁当」でも、それこそいくらでも)、 こんなシーンチョイスで来たことがまずひとつの驚きでしたが、もうひとつは
「応援のシーンで大真面目に『フトシ!フトシ!』って連呼するのってなんかヘンで笑えるよね」
「フトシって名前もいまあんまり使わないから新鮮だし」
というようなヤケに地肩の強いツッコミ点からの引用だった部分です。
ほかにいくらでもあるツッコミを無視して「フトシ連呼」の妙さにひっかかったのが平本先生らしい。
そういえばぼくも「孤独のグルメ」読んだあとに「何この終わり方?フトシがんばれ!で終わりなの?」と笑ったのをおぼえてたなあ。

そして今回もこの元ネタの使い方。 マッチョテイストもツッコミ点が無限にあるのですが、あえてこのシーンで攻めてくるのが平本先生らしさ。
いままでもアゴゲンにはマンガの本ネタパロが多く登場してたとはいっても、さすがにマッチョテイストで来るとは思いませんでした! 次はナニで来るのか、もちろん期待して待ってますから!!

ただ問題は、頭文字Dや湾岸ミッドナイトをよむ層のどれだけが「マッチョテイスト」という元ネタを知ってるかってことですけど・・・元ネタ知らない人にはどんなオチかサッパリわかんないと思う。 しかしそれでも許されるのもまたすごい。いろんな意味でも冒険野郎ですね!

マッチョテイストはよくいらっしゃるお客様から教えていただいたんですが、もちろん爆笑してハマり、当コラムで取り上げたあと小池書院からまさかの復刻。 それで読まれた方が飛躍的に増え、ついにはアゴゲンでもパロディにされる・・・ネタ出し屋としてはうれしい限りです。今年は「銭っ子」とか復刻されないかなあ・・・。

※この記事は2009年2月16日に掲載したものです。

(担当岩井)

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