岩井の本棚 「マンガけもの道」 第11回

暗黒大陸その3 ジョブシステム


(図1)
表紙は第六天魔王グレート


(図2)
アメリカ人的には超GJ

RPGの世界では、いまでこそ様々な職業がありますが、最初は戦士しか選択肢がありませんでした。
やがて魔法使いが登場し、やがて戦士の種類、魔術師の種類、 そして属性が追加されていき、さらには種族、やがては吟遊詩人や拳銃使いなどの多彩な職業が選べるようになったのです。

成年マンガの世界も同様です。99年以前は、商業誌として成り立った職業ジャンルモノアンソロジーコミックはせいぜい女教師、 ナース、人妻くらいしかありませんでした(同人はもちろん別です)。
2002年くらいから一気に種類が増え、さらに妹やメガネといった属性も加味され、 アニメとゲームのアンソロジーに登場するキャラクターを踏まえれば、ほぼどんなフェチにも対応できるほどワイドレンジになっています。
まあ、幼なじみで、筋肉質なメイド、といった支離滅裂な要求でない限り、ですが。

筋肉質、に付随するマッチョなイメージのものは、日本では忌避されがちですが、 ヨーロッパ・アメリカではマッチョな女性に強い憧れを持つ男性は非常に多いと聞きます。

たとえば12チャンネルの日曜の3時くらいのぼんやりした時間に放映される「日本エクササイズ大会」とかで、 腹筋割れた女性がニカーッ!!と満面の笑みをたたえながら、 気が狂ったみたいにピョンピョコピョンピョコ早足で跳んだりはねたりしてるのを見て、 多くの人は理由はわからんが何となくニガテ、に感じるとおもいます。

いかに日本の得意種目とはいえ、シンクロナイズドスイミングを見るときにどこかこそばゆい気持ちがするのと同じように。
ですがアメリカだと、エクササイズの女王、なんていったら、かなりのステイタスですよ。もう美の象徴、みたいな。

ですが最近は日本でも洋ピン的感覚というか、マッチョ女性の汗臭いイメージに魅了された若人たちも少ないながらも増えているようです。


(図3)
アマゾネス、カッコイイ


(図4)
ナチスぽい


(図5)
もとい女性作業員


(図6)
筋肉にも程がある!


(図7)
来て、というよりヘイ!カモーン、てかんじ


(図8)
筋肉サンドイッチ

マンガの世界でもこういうのが登場しました。
「猛々しき女たち アマゾネス!」(図1)。
冠は「超姉御漫画アンソロジー!」
やれやれ、前前回は野郎系で、今回は姉御系ですか。
表紙はこんなですが、正直一作目のこれは、方向性と趣旨が皆まだ理解できてなかったらしく、 軍隊とか婦人警官とかが出てくるだけで、マッチョなイメージはほとんどなく、
表紙を見てマッチョな女性に蹴られてみてえ、とか嬲られたい、と感じた趣味の人にとってはもの足りません。
吹っ切れたのは2作目の「アマゾネス!2」(図2)。
前回は無かった概念が、今回は全作家きっちり踏襲しています。
ということは読者から強い要望があったんだろうと思うんですが、この本に登場する女性は全員腹筋バキバキに割れてます。

登場するのは、
アマゾネス(図3)
女ボディガード(図4)
女土方(図5)
そして女子プロレスラー(図6)、
と素晴らしい組み合わせです。
今回は汗臭く、筋肉メキメキで、女版ヤン・スエみたいなのが大量に登場し、 中途半端は何事もいけない、やるならば思いきりやらんと、というのが感じられ、 何よりも描いてる人たちがめったやたらとたのしそうなのがいいです。

中でも女土方を描いた作品「青色の汗水」を描いた越智多たいじ、 という方は現場の経験があるのか、妙にリアルなセリフやデティールが登場、なかなか面白いです。
たとえば電動ハンマ機の使いすぎで陰毛が擦れてなくなるとか「オレァ嘘つくことと、現場監査が大っ嫌ィなんだよ!!」というセリフとか。
ただ見てください、筋肉女にあこがれる、というのは畢竟こういうことです(図7、図8)。
僕にはちょっとそこまで踏み切れないですね。

余談ですが、エロゲーの世界でも、マッチョな女性作業員がノーテンキにやられまくるというシリーズ、 その名も「Theガッツ!」シリーズがあります。
イベント画面では、マウスをカチカチとひたすらクリックする、 という肉体労働がそのままエロ画像へのノルマ、として直結、 ノルマが終るとご褒美のエロ画像、でもそれもマッチョ女性のアメリカ〜ンなエロポーズ、 という素晴らしすぎるシステムを搭載したソフトでした。
このソフトを普通に世に出し、しかも5本も続編を作っているオーサリングヘブン、というソフトメーカー。
先駆者は常に光り輝いています。
でもその光って、ボディビルダーの肌みたいなテカリ具合なんだけどね!


(図9)
格ゲーぽい

ただ上記のものはまだ理解できるのですが、さすがに職業「くの一」はどうなんでしょう。
僕のイメージするくの一は由美かおるです。そんなものには萌えません。
ですがくの一は最近こんな大きな版型の本でフューチャーされ、続編まで作られているという大人気振りです(図9)。

ただ画力が追いついていないので、くの一の冷酷無比なところとか殺人機械的な部分は殆ど出てなくて 「なんだかKOFにこんな格好の娘、でてきたかなあ」くらいのネタバレ度、そして日光江戸村的なコスチュームには納得いきません。

それにしても企画出した人はどんなんなんだろう。「次、くの一で行きましょうよ」ってコトには普通ならないと思うんですが。
くの一がホントに来る、というんなら、来年あたりは、くの一喫茶なんかが出来ても不思議じゃないですね。


(図10)
日本発のホームレスエロ劇画


(図13)
・・・。


(図14)
おいおい、ヘソの緒切れてないよ

RPGでも、基本職業があるのですが、さすがにモンクとかエルフに混ざって無職とかリストラ社員がパーティに混ざっていることはありません。
ですがエロマンガではついに、ホームレス女性が主人公のものが出ました。
「ホームレス冴子」(図10・萬蔵)。
主人公、ホームレスですよ。しかも妊婦。
それどころか、相手までホームレス!

新しいエサ場情報と引き換えに、ホームレスオヤジと一戦交える(図11)、とか、 このマンガはどういう人を読者として想定している商業誌なんだろう、という部分がチンプンカンプンです。
なにしろホームレスが主人公だからか、汚いとか、汚れる、みたいな表現が超多い(図12・図13)。

(図11)
でもだまされる


(図12)
・・・。

これは差別的じゃないんですかね。最後のエンディングなんか、ホームレスが子供産んでハッピーエンディングですよ(図14)。
なにがハッピーなものか!だいたい、へその緒つながったまんまだよ!

この萬蔵、という作家さん、過去の作品も唐突な展開と仰天のネームで、かなり破天荒な作風です。
読んだ人がことごとく萎える展開、そしてやる気あるのかないのかわからないテンション。
個人的な意見では、かなりアレ、というか、なんか狂ってるんじゃ…あわわ、発想力に非凡なものを感じさせます。
最近ヘンなものの琴線、ゆるんできたなという貴方におすすめの一冊です。

本店2には上記のような成年コミックが取り揃えております。興味のある方は本店2まで、ご来店ください。お待ちしております。

※この記事は2004年12月17日に掲載したものです。

(担当岩井)

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