岩井の本棚 「マンガけもの道」 第19回

日本炉妄想界の眠れる鬼才 山崎浩


(図1)
名作「なつやすみ」より


(図2)
ブカブカブラジャー


(図5)
妹萌えをはるか前に先取り


(図6)
このセリフにグッと来た方は変態です


(図7)
男の子っていやらしいわ


(図9)
真夏、民家、友達の姉、そしてないしょ・・日本に生まれてよかった

僕はいま、ほとんどテレビを見ません。
疲れて帰ってきた後に何かストーリーを追う、 という脳みそメモリの余裕がないので、深夜の教育テレビとかNHKなどを、 見るでもなくボンヤリと眺めてます。
民法の深夜枠は同じCMがくり返し流れるのが嫌いなので見ていませんが。


(図3)
プロレスごっこ・・やらしい


(図4)
ぐんずほぐれつのあとに

そんな僕はテニスに何の興味ないのにウインブルドンを眺めていても苦痛に感じません。
ああ、玉があっちいったりこっちいったりしてて楽しいな、愉快だなくらいのものです。

そんなわけで世間のお笑いブームも話題のドラマも人気の若手俳優もぜんぜん分かりません。
こんなのがここ数年続いてるので、僕の芸能史はポッカリと2000年以降が空白のままです。

なので「くりぃむしちゅー」よりも「海砂利水魚」の呼び方がしっくりくるくらいだし、 毒舌だった爆笑問題が、こんなにも世間に受け入れられていることに驚きを隠せないでいたりします。

うちの親父がよく、テレビをみてて知らない人が出てくると「この子は何屋さんなんだ」「何が本業だ」と詰問口調でよくきかれ、 そのたびに「歌手」だの「相撲取り」とかスラスラ答えられましたが、僕も最近おやじ化が進んできたので、 何が本業なのか分からない人がテレビに大量に出てきて困ります。

僕は未だに山田優とか長谷川京子が何屋さんなんだかわからないくらいです。
恥ずかしくて周囲にも聞けません。

そんな僕の中では、松嶋菜々子は「生茶CMの人」よりも先に「とんねるずのみなさんのおかげです」のコントに出てきて「くねくね」とか 「何でもしてあげるから中はやめて」などと痴語イジメにあってた安っぽい女の子、くらいのイメージのままです。ぜーんぜん高級感ありません。

同じようなことはマンガでもあります。
山崎峰水という作家をご存知でしょうか。

最近は角川の「黒鷺死体宅配便」や「MAIL」で、新しい切り口の心霊奇譚ものを描いていて、 絵を見た限り、若い子がマネしそうなカリカリした描線のシャープな絵で、 ごく最近デビューした、田島昭宇とかのラインが好きそうな若手作家、に感じちゃうと思います。

ぼくは一年戦争前に、のちに旧ザクとなる機体を開発する「ガンダム版プロジェクトX」話の「デベロッパーズ」を読んでいて、 なんかどこかで見たことある絵だな、と思ったのですが、やっとこさ思い出せました。

ああ、なんだこれ山崎浩じゃんか、と。
そう、あの「どきどき」の山崎浩さんです。
てか「どきどき」の山崎浩、いま和製ホラー描いてるんだ、のほうが正しいですかね。

山崎浩名義で描かれていたマンガは「どきどき」「ガルダイヤ」など数作しかなかったように覚えていますが、 忘れられないのはその過剰なサービス精神です。パンチラ、胸チラ、まるはだか。ノーパン、スクール水着。
そういうのがたくさん出てきます。

なんだ、別に普通じゃない、それくらい? と思う方もいるかもしれません。
そう、確かにそれくらいだったらたくさんあります。でも、それがすべて小学生のものだ、となるとやっぱ話は別でしょう。

山崎浩時代の代表作「どきどき」は、少年時代、少女時代の甘酸っぱさと背伸びしたくなる気持ち、 Hなことへの関心と恐れる気持ちがよく表現されている佳作です。

基本的には子供のころを回顧するストーリーがメイン。
舞台は都会ではなく田舎、水遊びや森が登場する牧歌的な背景。
そんな舞台で小学生のガキどもがエチケチパーします。

この作品が何年経っても忘れられないのはその「炉的なモヤモヤ」感が異常に強い部分でしょうか。
モヤモヤどころかモヤリモヤリ、モンヤリコモンヤリコします。

マンガだからいいようなものの、実写でやったら、海外では持っているだけで懲役刑を喰らうこと間違いナシのあぶなかしさです。

炉のヒトにも種類はいろいろあるのですが、女の子に中性さを求めるヒトは多いとききます。
山崎さんはそういうタイプの人なんじゃないかなあ、と思います。
それは炉のヒトが萌えそうな、歓喜しそうなシチュエーションがとにかくまあ多いこと、多いこと。

マンガだからいいようなものの、実写でやったら、日本では製作者がフジテレビで実名報道され、ヘタしたら「チョーヤ」とか「ロボ」などとあだ名される始末になります。
じゃあその登場するシチュエーションは・・・

たとえば川で水遊びしていて服がぬれてはだかんぼ、とか(図1)、
姉のブラジャー姿に憧れて、妹がペタ胸にブラジャーをつけてみる、とか(図2)、
男勝りの女の子とプロレスごっこしててうっかりチューしてしまう(図3・4)、とか、
おにいちゃんがガールフレンドとチューしてるの見っけて「おにいちゃんは私のだかんね!」とダダこねるとか(図5)、
同級生が山の中でオシッコ我慢できなくてしるのをみちゃうとか(図6・7)、
お母さんと一緒に女湯に入っていると、同じ学校の女の子二人組みに「おちんちん見せれ」とセクハラ受けるとか(図8)、
同級生のお姉さんにねえキスしよっか?と誘惑される、とか(図9)、


(図8)
ちなみにこの話のタイトルは「おちんちん」です

とにかくベタなシチュエーションなのですがそのベタを思い切り踏んでくる勢いのよさ。

そして山崎峰水時代の田島昭宇ぽいカリカリした尖った絵(図10・11)とは別方向な、 まるでジブリ作品のような丸っこいGペン絵。ジブリな絵で、炉炉炉でキュキュキュな展開!!!
炉なヒトにはGJ百連発なのではないでしょうか。


(図10)
現在の絵「MAIL」より


(図11)
同じく「黒鷺死体宅配便」より

コミックLOなどに載っている、未成熟な少女がエッチして汁まみれになるような犯罪エロマンガは、 もう一読・即デリ、記憶に残ること全然ないですが、 この「どきどき」、具体的なエロはほとんど登場しないにもかかわらず、 妄想グルーヴの異常な高さと童貞世界観の結晶度の高さから、いまだかつてこれを越える大 ロリ妄想マンガはそうそうないんじゃないかなとおもいます。

とにかくこの甘酸っぱさは大変です。赤面します。
女性の皆さん、いま彼氏の部屋にあったらとってもヤバな本、としてこの「どきどき」を単語登録しておくと、今後のためにも便利ですよ。
ただ、もし見つかったとしても、責めないであげてほしいものです。

しかしこのモヤモヤ感溢れるセンチメンタル乳首マンガがビジネスジャンプに連載されていた、って不思議だなあ。
ビジネスジャンプっつったら、猿渡哲也とか村生ミオとかのバイオレンス&アダルティなマンガばっか載ってる雑誌なのに。
そこに日本の炉妄想文化の粋が同時に載っていたなんて。病んでたんですね。

実はこの山崎浩さんはデッサン力が並外れて秀でていて、 頭身を縮小した絵でも身体のバランスが崩れていないし、水彩画がとても美麗です。

そこを買われたのかモーニングで不定期連載された「ふしぎふしぎ」は、その水彩画世界の完成度の高さをまざまざと感じさせてくれます。

これだけのカラー、そして妄想の妙手が、和製ヘッポコホラーの漫画化などをやっているのは日本妄想黒歴史上において、多大なる損失です。
住みよい世界に発表の場を与えるのが今後のエースネクストの課題といえるのではないでしょうか。


(図12)
すごい描き手だ、すごい

まあでもこの「ふしぎふしぎ」も、少女が出てきてはだかんぼ、とか水ジャブでブラウスが透ける、 みたいな「やっぱりなあ」「きた、ど真ん中」さを感じたのを覚えています。
歌舞伎だったら「よっ、音羽屋〜〜」とかの掛け声がかかるくらいのきたきた感ですね。

それにしてもこの(図12)。日本一のマンガ雑誌のブランド「少年ジャンプ」は乳首NGのきつい制約があるというのに、 兄弟誌「ビジネスジャンプ」ではこんな絵がフツーに掲載されていたなんて、うん、これはすばらしいことです。
こうでなくちゃいけませんとも。

山崎峰水名義の本、また山崎浩名義の本、ともに本店2に置いています。

自分のストライクゾーン/対象年齢が1年に1歳ずつ若返ってきてて、気がついたら一ケタになっちゃったわ、という永遠のお兄ちゃんは本店2へ急げ!

※この記事は2005年7月2日に掲載したものです。

(担当岩井)

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