岩井の本棚 「マンガけもの道」 第1回

おかあさんあなたも主治医です

中野店では一般的な商業誌を扱う店舗が2つあります。

集英社・講談社・小学館などの大手出版社、手塚先生や藤子先生など有名作家と少女マンガを扱うのが本店。
そしてそれ以外の出版社とミドルビンテージ、エロ、読み物ほかマンガ派生物を扱うのが本店2です。

映画でいうならハリウッドや東宝、東映など大手作品が本店で、インディペンデント系の単館上映作品が本店2、といいかえられるかも。
とにかくメジャーに対するアンチとしてのマイナーの意気込みを、十二分に味わえる店舗です。

マンガを大きな娯楽文化の大系のひとつとして考えたときに、様々な可能性を模索し、ジャンル分けされ、どんどん岐路が増え。
末端は肥大し、また途絶えながらも発展を続け、あらゆる部分への影響を与えつつ、今日を迎えています。

その経過の中で、みなの通らない道、険しい道、踏みならされていない道、逆に踏まれすぎて磨耗した道・・・そんな、いわばけもの道をすすんだがために、結果忘れ去られたものたちがあります。
マイナー系とエロがメインの本店2には、そんな作品が数多く集まってくるのです。
このコーナーではそんなマンガ発展の歴史から零れ落ちたものたちを紹介していきます。

しかし第1回の今回紹介する「おかあさんあなたも主治医です」を、「ああ、あれね」と思い出せる人は相当の病気でしょう。。

どんな本かというと、これはマンガではありません。「家庭の医学」のような、いざというときのために読むような家庭医療の本なんです。
ではなぜここで取り上げるかというと、絵を描いているのが井沢まさみだから。
井沢まさみ・・・というよりも代表作「どっきんロリポップ」で思い出す方が多いはず。


(図1)

「ハートキャッチいずみちゃん」とか「まいっちんぐマチコ先生」みたいな、軽いエロで小学生のココロをモヤモヤさせた系列の作品ですね(映画でいうなら「アイコ16歳」とか「転校生」あたり)。今でいうなら「いちご100%」あたり。

そんなマンガを描いてる人が、こどもの医学を紹介したガイドブックの、挿画を担当している・・・。
そろそろなにか、キナくさいものを感じた人もいるのではないですか。
代表作のタイトルからしてロリポップ・・・である以上、そういったマインドはあるというか、こどもに興味ある、のも致し方ないとは思うのですが、こんなに全解放してヨイと誰が許可を出したのでしょう。


(図2)

まず図1。
疱疹の説明ですが「患部を清潔にする」の主語は子供の、であるべきはずなんですが、お母さん素っ裸ですよ。
お母さんだって別に着衣でもいいと思うんですがね。

図2。
手足口病、などという不気味な病気の説明でこんなかわいく子を描く必要があったのかな。特にウインクには必要性を感じません。

図3。
とびらページの「特に注意したい病気」の絵がレオタードの少女。
全然関係ないですね。趣味以外の何者でもないです。


(図3)

図4。
こんなミュシャみたいな絵を子供の医学の本に収録する理由あったんでしょうか。
ほかにも無関係に面白いシーンが多数。


(図4)

図5。
このネコ、少女の描き込みに比べて淡白ですね。イタチですよ、これ。だいたいネコってこんな老婆みたいな足でしたっけ。


(図5)



図6

図6。
絵もすごいですがセリフが大笑い。
「鼻血・・・なぜ、どうして出るの?」ですよ。
聞かれても困る。ホントなぜでしょうね。


図7
(クリックすると拡大します)

また冒頭に、医者の方のコメントで「漫画家の井沢まさみさんが、たいへん可 愛い、美しい絵を描いてくれました。発信の出る病気については、わかっていた だくために、少し、誇張してあるものもありますが・・・」うんぬん、とありますが、 これがその医者の人も「やりすぎじゃね?これ」と感じたらしい「誇張した発疹」シーン(図7)。
絵が可愛いだけにビビりますね。

ちなみにこの本は、井沢まさみさんの唯一のアートブックでもあります。
「どっきんロリポップ」のトラウママンガブックス版を買って当時を懐かしんだ大きな男のひとは、探し出してみてはいかがでしょうか。

※この記事は2004年9月21日に掲載したものです。

(担当岩井)

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