岩井の本棚 「マンガけもの道」 第17回

ありえね援助交際マンガ


(図1)
いやなリアルですね

最近の少女マンガってエッチいよねー、と、もう少女マンガを卒業したお姉様方がよく口にされます。

確かに、ジャンプが未だに「チクビNG!」的スタンスを貫いているのに比べれば、 ごく普通に長身のイケメンとフツーの女の子が、なんと青姦にカーセックス、 はては教室の中でもサカった牡馬のようにやり狂ってたりする少女マンガがあたりまえにあること自体驚きです。


(図2)
昇天ってコトバ古いなー


(図3)
娘の目の前で自殺すんなよ


(図5)
初代マリオのコイン音?


(図6)
罪悪感ナシナシ


(図10)
逃げるくらいなら最初からキモオタに売るなよ


(図12)
解決になってねえよ

たとえば前述「星に願いを」(「マンガに出てくる食べ物」第25回)なんかだと、 男3人暮らしの中に18歳の女の子が放り込まれてもなぁんも間違い一つ起こさないまま1年、という健全さで、 まあそれはそれでお前らそのモチベーションはなんなんだよって話ですが、つまりそれくらい少女マンガは健全で、 チューひとつすんのに単行本1冊まるまる必要なのが常識だったわけです。

ですが性に対してのガードが甘くなった昨今。講談社「デザート」なんかでよく発表される、
読者体験手記をマンガ化する! という企画の、体験手記を集めた「10000人が書いた女のコのスーパーリアル」(図1)という本には、中高生からすごい体験が山のように。


(図4)
たくあんの色に御不満


(図7)
搾取方法をレクする


(図8)
安しいなあ


(図9)
ヤな暗号

一例を出すと、13歳の女の子が15歳年上のオトコの気を引くために胸を強調するチビTで迫ってみて、 そいでやってしまうとか、いかにおまえ相手が大人の雰囲気プンプンだって言われても、13歳とやったらそりゃロリだろ、犯罪だろ、としか言いようがないですね。
都条例は、淫行条例はどうなったんだ。犯罪告白かよ。

まあそれだってこれがリアルなんだといわれたらそれまでなんだけど。
でも13歳の男の子、っていったら、まだオニヤンマとかクモハ○○系とか追っかけてるかもしれないよ?でも女の子は15歳年上と淫交してる。
この意識の差はなんなんでしょう。勝ち目ないですね。

そいなわけで性に対しての認識がはるかに進み、あまりに進歩的な保健の教科書が非難の対象になる今日この頃。
援助交際をテーマにしたマンガくらいあっても当然。
でもそれって青年誌の世界がメインで、さすがに少女マンガではあんまりありませんでした。
今回紹介する「わたしのからだ わたしのねだん」は例外中の例外、ショッキングすぎる内容です。

主人公麻衣はかえりみられない家庭に嫌気を刺し、ふとしたことで知り合った女子高生・雅に援助交際の世界に踏み込んでいく ・・・というのがメインのストーリー。これだけならありがちなんですけど、それをつづる言葉が過激です。
もう1ページ目から
「このヒトたちはわたしのカオをあまり見ない」
「キョーミがあるのはDカップのオッパイとアソコだけ」
「しつこく同じところばかりいじりまわして穴にツッこむと」
「腰を振って昇天する」
と暗黒劇団の呪詛みたいな毒々しい文句が書き連ねられ(図2)、読む人を悪いエナジーで一杯にしてしまう。
その1ページ後に父親がリストラされて自殺(図3)、さらにその1ページ後に、同居しているじじいはじじいで「こんな黄色いつけものなんざ食えるか」と荒くれる(図4)。
これじゃあ援交くらいしたくなるよね、というテクとはいえひどい展開の3ページです。

でやっぱ麻衣はやるせなくなって、渋谷のゲーセンでピコーンピコーンって前時代的な音のするアーケードゲームをプレイしているときに(図5)、 ナレナレしい少女・雅にあたしと遊ぼうよ!と誘われるが、その遊びとはパンツ売りだった(図6)。
学校でも硬いイメージの優等生を貫く麻衣は、アブナイと思う反面、雅の奔放さに惹かれていく・・・。

そして麻衣の処女喪失シーンですが、いきなしやんのはイヤだ、食事したりカラオケしてから、 とベトナムの買春窟の少女みたいなことをほざく麻衣に、雅は「どーせ最後はヤんだからさっさと終わらすほうが得!」と身もフタもない正論で押さえ込む(図7)。
代金はたったの3万円でした(図8)。
でもひと月もすると「直ホテルでオッケー、ゴム有りで前金3万円」などと、専門用語ビシバシつかういっちょまえのフッカーとなっていくのでした(図9)。
落ちるのははやいっつっても、早すぎですよ。

それにしてもこの先輩エンコー少女・雅はホテヘル嬢みたいに現実的な意見ばかりを吐き
「後で値切られないためにお金は絶対前払い」
「3万!それ以上もそれ以下もダメ」
「長くいたって儲からないからなんか理由つけてホテルからさっさと出ろ」
などと、実用的、かつオトコが鬱になるセリフをホイホイ口にします。

でもエンコーしつつも満たされない麻衣は、ぶっきらぼうだがいつも自分を見守っているクラスメートの少年・武笠にひかれていく・・・。
しかし、キモオタに粘着されてラブホから逃げ出す所を武笠にみられる!(図10) 錯乱してヒステリックになった麻衣は「あたしエンコーしてんダ〜」と言わんくてイイことまでいうと(図11)、 純情少年は動揺して「オレが買うよ!」(図12)「ホテル行こーぜ!!」「オレはおまえが知らんやつにやられてるのがイヤなんだ!」と、 よく考えるとワガママなことを言うのですが、これがクリーンヒットして麻衣はボロ泣きして改心(図13)。
ええーーー? 情緒不安定にも程がある問答ですよ。


(図11)
ホントいわんくていいのに


(図13)
泣くわわめくわ、厄介な麻衣


(図14)
根はヤンキー的


(図15)
油断ならない顔つき


(図16)
泣いて解決かよ、甘えですよね

ていうかアレですね、ここで問題なのは、本当に金ほしさにエンコーしてるのか分からないってトコですね。
でも麻衣は金が目的じゃなく、心のスキマを埋めるためにヤってるんだって感じに描かれてます。
・・・不安定な心の少女は円光に流されても仕方ないよね、っていうスタンス、なんかどっかで聞いたことあるなと思ったんですが、 思い出した「いたずら・次郎の場合」ですよ(「マンガけもの道」第5回)。心に傷があったら何してもいいのかよ、って理不尽だなあ。

結局麻衣はエンコーするのが辛くなって、雅と手を切ることを決意。
しかし雅は「ケジメをつけて最後、あたしの紹介する男と一発やって来い」などと逆上(図14)。
これ一回で終わればいいかと思った麻衣に地獄が待っていた・・・。

麻衣が紹介された男は、実は武笠の父親だった!(図15) それを知り武笠も苦しみ、最後は父親が検挙されて報道され、武笠の家はボロボロに・・・。

でも買った男が罰せられる今の法律上では、実は原因を作ってた麻衣はぜんぜん誰からも罰せられず、母親に白状して一緒に一日ボロボロ泣いて終わり(図16)。

でも、対する武笠のほうはというと父親が買春したって新聞にかかれテレビで報道され、家は売られよその土地に引っ越し、学校も退学するハメになってるんですよ。

この格差は何? 武笠本人は何にも悪いことしてないのに、麻衣がわけわからんケジメなんか通すから、1家庭メチャクチャだよ。これがケジメかよ。
いやあ高校生買うってこんな恐ろしいことなんですね。


(図17)
「生中だし」?

と、すごい勢いでブルーな援助交際マンガ「わたしのからだ わたしのねだん」を紹介してみました。

しかし最近のこは本当にここまで進んでいるんでしょうか。本当に?
というのは本書で、クラスで少年犯罪をディスカッションする・・・みたいなシーンで、高校生達が雑誌を読み
「値崩れで生半だしは当たりまえ」
「タイ製のピル飲んで月に50万稼ぎます」
などと発言しているシーンです(図17)。
これが本当に自分達と同じ高校生かよ、スゲーなー、と感嘆で引用されている部分なんですが、よく考え直してください。

「生中だしはあたりまえ」


(図18)
葛城大成、元ホスト


(図19)
鷺宮さん、フードコーディネーター

こんなオヤジ臭とオヤジ液を寸胴鍋で一昼夜グツグツ煮込み、その上澄みだけを集めたようなアブラギトギートなコトバ、あなたが高校生の時、口に出しました?
しかもそれの文脈スゲェな。
ありえないす。この言葉センス、桃太郎映像かよ。ムーディーズかよ。少なくても宇宙企画でないことだけは確かです。

あと、この武笠の父親、どっかで見たことあるなと思ったら「ギラギラ」の大成さん、そして「味いちもんめ」の鷺宮さんに似ています(図18・19)。
全員、才気走っていて油断ならないところまでそっくり。
先月、とある援交ビデオ製作グループが摘発され、その余波で裏ビデオ界も摘発ラッシュだったのですが、 その摘発ラッシュをつくったのはこんなカオの連中だったのかもしれません。

「わたしのからだ わたしのねだん」は3F本店にあります。気になった方は是非。

※この記事は2005年4月14日に掲載したものです。

(担当岩井)

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