岩井の本棚 「マンガけもの道」 第7回

暗黒大陸その1

成年マンガ(女性であればBL系コミックス)を、全く読んだことがない、 という人は当社のこういうコラムを読むことはない、と僕は思ってます。

ですが一般的な認知度はいまだ微妙で、たとえばエロDVDが部屋にあって、 それを彼女が発見しても「エッチなの見てんなよ」くらいですむと思うのですが、 コミックメガストアみたいな成年コミック雑誌が床に転がっていたら、 ごく一般的な彼女は貴方の設定を「キモオタ〜?」とやや変態よりにシフトしなおすでしょう。

まあこういうさいに不問、見なかったことにされるのが一番つらいのですが、 僕もとある女性の部屋で「セックスのあと男の子の汗はハチミツの匂いがする」 (おかざき真里)が本棚にあるのを見たときに「すげータイトルの本読んでんな、オイ」と大いに首をひねりつつも、 なんも触れなかったように、やっぱたいていの女性は意識的にスルーしてくれるんでしょうか。

でもやっぱ「奪!童貞」(にったじゅん)とか「アナルジャスティス」(上連雀三平)なんていう 反・社会的タイトルのコミックを書棚に並べたまま、スケを部屋に入れられる男がいたとしたら、ちょっとそれは雄々しすぎですね。


(図1)
小人姦
話ズレましたが、基本的に成年コミックス界、というのは「ハデな性器描写さえしなけりゃオッケー」くらいにユルいので、 表現的には商業誌ではお目にかかれない表現がひしめき合ってます。
日本以外でここまでエクスプロイな変態表現コンテンツを大量に持っている国家はゼロだと思うのですが、どうでしょう?

その裾野の広さがあるからこそ、成年マンガの表現世界は広大で、 すでに多くの人が集まって発展させた、都市のように華やかな地域もあるし、 かたや中南米の奥のほうみたいに、開拓民が細々と生活してるだけの未開地、過疎地も沢山あるのです。


(図2)
グロとスカトロLOVE
表現の未開拓部分・・・なんだかグッとこないですか?
けもの道、暗黒大陸編ではそんな成年マンガの開拓民たちを紹介していきたいと思います。

「矢追町成増(の全作品)」
今でこそ成年マンガの先人たちが畑を耕してくれたおかげで、堀骨砕三(図1)、 、町野変丸、駕篭真太郎(図2)といった「世間に受け入れられたド変態」たちが活躍できるのですが、 その、最初にド変態の畑を耕していたうちの一人が、この矢追町成増です。


(図3)
ナニ考えてんのかマジ不明


(図4)
ニードルって一般用語かよ
どのような作品を描いているかというと、ニードル物です。
・・・ニードル?
先のとがった太い太い針状のもの・・・千枚通しみたいな・・・をニードルと称し、女の子に刺す。で、女の子は「アヒィィン」と叫ぶ。

矢追町成増の作品はこれオンリー。全てこのパターンです。
そもそもこのニードリング、というのはユーロ系SMの先端痛撃プレイなのか、それともピアッシングの変形なんでしょうか。
もはや面白いのかつまらないのかすら分からないんですが、ひとつだけ、とてつもなく狂ってることだけはさすがに分かりました(図3・4)。

で、ニードルって先っちょ尖ってるので、女の子刺されるとたいがい死ぬ、という救いない結末。絵もヘタッピー。
ここで問題なのはヘタ絵女子に尖った針ズブズブぶっ刺して女子死亡、でエロ的カタルシスを得られるかということです。

ぼくはそこまでド変態じゃないので到底ついてけませんでしたが、 ニードル、という言葉を聞いてオッ! とカリ首周辺にビクッと電流の走る男の子が少なからずいるからこそ、 2004年になっても新単行本が発売されるのです。


(図5)
人を煽るタイトル


(図6)
ホントにこんなんか?
余談ですが、現秋葉原店長と矢追町先生のニードル話を延々と飲み会でしたところ、われわれ2人以外の全員が呆れて寝こいた事があります。
スレた相手以外には、人前で作家名を出すことは禁物でしょう。

「盲目市子物語」(土肥けんすけ・図5)
座頭市、の少女版ですか? これ。
盲目の居合い抜きの達人の少女・市子と、楽団部のおこす学園コメディなんですが、これだけ大文字で「盲目」とかくセンスがヘコみます。
別に「少女座頭市・市子物語」でも、「市子と楽団部の仲間たち」でもよいはずなんですよ。

エロシーンはちっともエロくなく、しかも内容も楽器、盲目、居あいぬき、無感覚症そしてレイプ、と、素材が散らかりすぎて収拾のつかない感じ。
しかも絵柄が90年代以前の古臭さで、小学館の85年デビューくらいのダメ作家5人と、あさりよしとおを一緒に鍋でグツグツ煮、 タッパーに入れ、冷蔵庫で冷やし、煮凝ったそれを十分割した奴をさらに電子レンジで3分くらい加熱したようなヘナチョコ絵です。
ただ、主人公がエロ座頭市少女(図6)、というジャンルはこれオンリーです。


(図7)
乳首、長っ!


(図8)
水芸ですか?
「母性煩悩」(マスタングR)
古くはみやびつづる、現在で言うならLINDAのような人妻・インセストもの。
物語は良くも悪くも破綻せず、例えば「夫が出張中に息子に迫られて困るワ!」とか 「息子のオナニーこっそり見て欲情しちゃった、まあどうしましょう」なんて感じのなーんも考えてない頭のカランカランぶりです。
ですがこれこそが王道。
安心して人妻好きの方におすすめできる、黄金のルーティン・ワンパターン。

しかし一つの箇所が、このマンガを異能マンガにしてしまっています。
乳首が異常に長いんです、どの奥様も。長さ10センチはあります(図7)。
そしてみんな興奮すると母乳をビシャー、と噴出します(図8)。

ぼくアタマ悪いんでよく分からないんですが、これは女性を小バカにした表現なんじゃないですか。
たとえばいいともで、乳でかいんだから、興奮したら母乳出るだろ、 キミ、とタモリがMEGUMIあたりについ言っちゃったとしたら、抗議の電話が鳴り止まないことは容易に想像できます。

そして困ったことに、この長乳首、なんかキモチ悪いんです。
乳がデカイのはうれしくとも、乳首が比例して長かったらうれしくナイことがよく学べます。
ふだんコミックLOとかを読んでいる炉萌えのヒトが何の間違いかこの本を読んだら、長乳首が夢に出てうなされるとおもいますね。

というわけで次回も萎え要素のあるエロマンガを拾い上げていきますので、よろしく。
そしてここまでがまんして読んでくれた女性の方、ホントにすみませんでした!

※この記事は2004年11月6日に掲載したものです。

(担当岩井)

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