2009/11/9 21:00掲載
まんだらけ 小倉店

L.S.C in 小倉 〜ライトノベル普及委員会〜【第36回】何十年後でもいいから続きが読みたい話 (その1)

今回から新しい話題を。

ライトノベルというジャンルは、少年漫画のように人気や読者の意見、嗜好が比較的反映されやすいので、長期にわたるシリーズにするつもりだった話が短めに終わったり、逆に一冊きりで終わるはずだった話が長期シリーズになったりするのはよくあります。
そして、なかには残念ながら未完のまま続きが長年出ないもの、あるいは途中で放置されて完結に至らなかったものもあります。
今から紹介する作品はその筆頭といえます。

(図1)

この作品「神々の砂漠 風の白猿神 (ハヌマーン) 」の発売は1995年。
第6回富士見ファンタジア長編大賞に選ばれました。ちなみに今年で21回を迎えるファンタジア長編大賞ですが、大賞は過去5作品のみ。
「スレイヤーズ!」「風の聖痕」ですら準入選です。

「風の白猿神」には、新人による投稿作、というにはかなり珍しい特徴がありました。 それは”話が完結していない”というものです。
それは”いつでも続きが書ける”とか”いくつかの伏線が未回収のままである”などというような生易しいものではなく、いってみれば本当に”超大作の一作目”にしか見えないような、ネタフリだらけの話だったのです。

この作品が、投稿時にどの程度完成した作品に近かったのかは知る由もありませんが、まがりなりにもこうして発売されたわけですから、間違いなく編集者の手を介して、これで大丈夫だと判断され、発売されたわけです。
そもそも”終わっていない話”であることは、新人賞の作品としてはかなりの、いやとんでもないマイナス要素であることは疑いありません。にもかかわらず「風の白猿神」は大賞を受賞したのです。

ここから導き出されることは二つ。
ひとつは、この作品が”終わっていない”というマイナス要因を抱えても、なおあまりある程魅力的だったということ。
もう一つは、富士見ファンタジア文庫の編集部が、この作品の続編を出す気満々だったということです。

ストーリーのほうは、ハイエンド・ファンタジー+ロボット物+ボーイミーツガールという、王道三大噺のような構成になっており、作者自身の「ラピュタ+ガンダム」という言葉もうなずける内容。 『機動新世紀ガンダムX』との共通点も多いのですが、実は「風の白猿神」のほうが発表は先です。

この”完結していないデビュー作”が忘れられない読者は担当以外にも数多く、アマゾンのレビューやネット書評、さらには某巨大掲示板には未だ作品別スレッドが稼働しています。 なぜ一度は2巻の情報が公式にも掲載されたにもかかわらず出なかったのか。今となってはもう知るすべはありません。

しかし14年経ってもまだなお面白い作品なのですから、あと何年経っても面白いに違いないと思います。
なので、いつの日か続きが出てもきっと面白いことは間違いありません。
ライトノベル隆盛のこの時期。それに触発されて、滝川羊という奇妙に忘れがたい名前の作家さんが復活してくれれば…。

次回もこのテーマの予定です。

(担当 有冨)

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