まんだらけ 小倉店

L.S.C in 小倉 〜ライトノベル普及委員会〜 第2回 「スレイヤーズ」について思うこと(その1)

前回、入れるはずだった序文をごっそり抜かしていました。
なので、非常にかっこ悪いですが、二回目にして挨拶します。
本稿は、まんだらけ小倉店の活字好きな、30過ぎの男性(オッサン)スタッフが、ライトノベルやその周辺について思うことを、とりとめもなく書いていくものです。 いちおう、小倉店の自己紹介の一貫みたいなものだと思っていただければと思います。
こんなまわりくどい自己紹介もないとは思いますが、読んでもいいというモノ好きな方がいらっしゃれば、幸いです。

あんまり序文に裂いてもなんなので、早いところ本文にいきたいと思います。
今回は「スレイヤーズ」(図1)です。



(図1:スレイヤーズ新装版「カッコイイ!」)

アニメ「〜REVOLUTION」を見られている方も多いと思います。
原作もののTVアニメで、第4期が製作される(しかも主要キャラが一切変わっていない)作品というのも、なかなか珍しいのではないでしょうか。
しかしながら、「なんで今さらスレイヤーズ?」と思うこともあります。
人気の作品とはいえ、長編シリーズ終了から8年、シリーズ開始から20年近く経つにもかかわらず、アニメ化のみならず、 それに合わせての新装版・短編シリーズ改訂・コミックの増刷などなど、失礼な言い方をすれば「異常な厚遇」とさえ思えます。
なぜこんなに(また失礼な言い方ですが)”今さら”もてはやされるのか?

結論からいうと、ライトノベルは20年経った今、 「スレイヤーズ」のような作品を生み出せていない ということだと思います。
誤解されないように言うと、別に「スレイヤーズ」が、ライトノベル最高傑作だとか、そういう意味ではありません。
ただ「スレイヤーズ」がワンアンドオンリーであるということ、つまり一切のフォロアーが出てきていないということです。

「いや、●●とか××とかあるじゃん!」という声も聞こえてきそうですが、”類似品”はあっても、「スレイヤーズ」の持つテーマ、というか空気を持った 作品は、ライトノベルはおろか、普通小説でもなかなか思いつきません。
浅学な担当がかろうじて思いつくところで、安孫子武丸「速水三兄弟シリーズ」か、クレイグ・ライス「マローン弁護士シリーズ」あたりが、無理やり似ているような気がするくらいです。 上記に挙げた作品と「スレイヤーズ」の共通点というのは、 ”ふざけた調子で深刻な命題に取り組む”とでも言えばいいのでしょうか。

「スレイヤーズ」は(長編に限って言えば)極めて悲惨で陰惨な話です。
「どこが!?」とまた異論が聞こえてきそうですが、主人公・リナ=インバースの一人称と、作者・神坂一先生独特の騙り(かたり)に釣られて なかなか気がつかないだけで、作中で展開されているのは、救いのない結末の話が非常に多いです。

(以下ネタバレが含まれますので、万が一未読の方がいれば見ないでください)

初期三作に限っても、
第一作「スレイヤーズ」では、己の眼を治すためだけに研鑽を重ねた男が、世界を滅ぼす魔王に覚醒。
第二作「アトラスの魔道士」では、恋人を失った男が、不死を求め、結果魔族と融合した結果、最後は恋人のコピーに殺される。
(ちなみに「アトラス〜」は神坂先生も思い入れがあったのか、某キャラが長編最終巻にまさかの再登場をしました)
第三作「サイラーグの妖魔」は、愛する人物の仇を討とうと思った女性が、傀儡だと思っていた相手に殺害される。

(以上、ネタバレ終了です)

というように、悲惨極まる話が展開されます。どこのマイケル・ムアコックだ、と問いかけたくなる救いのなさです。
むしろこれらの話とのバランスをとるために、短編シリーズ「すぺしゃる」は執筆されていたのではないかと思いたくなります。
しかしこれらの話は、前述のとおり主人公リナによって、終始突き放したトーンで語られます。

主人公はいわゆる”正義”や”秩序”のために戦うことはなく、 また”主義主張”や”矜持”のためにすらも戦うことはありません。
オフビートとか、ドライとかいろいろ表現はあるかと思いますが、どちらかというと、ゆうきまさみとか浦沢直樹の作品にも散見される 「照れ」が、「スレイヤーズ」の持つ空気を独特にしていると思われます。

ほぼ同世代の作家で同じ関西出身の作家では「ロードス島戦記」の水野良先生がいますが、こちらはよりストレートに”英雄活劇”を表現しています。
関西出身ということで、お笑いや新喜劇との共通点を評されることもありますが、トーンとしては上方落語のほうが近いかもしれません。 (たぶん偶然でしょうが、上方落語には旅ネタという、スレイヤーズと共通するキーワードがあります)


(図2:スレイヤーズすまっしゅ。お持込みお待ちしております!)

1995年のTVアニメ化以降、より多くのファンを獲得した「スレイヤーズ」ですが、アニメは原作のストーリーを踏襲しつつも、 出演者の快演(もしくは怪演)によって、より明るいトーンで語られていました。

原作者がそれをよしとしなかった、わけではもちろんないでしょうが(自分でストーリー構成までやっていたのですから嫌なわけないですが)、 TVアニメ版「スレイヤーズ」「〜NEXT」「〜TRY」が放送されていた3年間に発表が始まった長編2部は、 アニメで人気を博したゼルガディス・アメリアといった人気キャラを一切登場させず、 ゼロスすら最終盤にわずかに登場という展開にし、さらにストーリーはより陰鬱になっていきました。
この辺の特色には、やはり作者神坂先生の個性が大きくかかわっていると思います。

無駄に長くなったので、後半は次回にします。申し訳ありません。

また申し訳程度に告知すると、小倉店では「スレイヤーズ」新装版、および「スレイヤーズすまっしゅ。」(図2)強化買取中です。

(担当 有冨)

※この記事は2008/07/31に掲載したものです。
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