2009/11/9 21:00掲載
まんだらけ 小倉店

L.S.C in 小倉 〜ライトノベル普及委員会〜【第35回】文庫とハードカバーの間に横たわる何か(その5)

さっそく前回の続きから始めます。



(図1)


桜庭先生には、実作者であるとともに、書評家、というより乱読家の一面もあります。
小説家が読書家であるケースはもちろん多いと思いますが、桜庭先生の場合は別格というべきで、エッセイの内容をすべて事実とするならば、自身の執筆と食事・入浴・睡眠などと所用以外は読書ではないかと思うほどの読書量を誇っています。
その内容も多岐にわたっており、フィクションが多いこと以外はほどんど縛りがありません。このある意味節操のない読書嗜好が、桜庭先生のアルティメットな執筆の守備範囲につながっていると思われます。
忙しいとは思いますが、今後ライトノベルの書評もなんらかの形で桜庭先生にやってほしいと切に思います。少し前の少年コミックもそうですが、ライトノベルも未だしっかりした書評空間がネット以外に存在していませんので。

以前乙一先生の文章を書いたときにもちょっとだけふれましたが、集英社のジャンプJブックスというレーベルは、近年の発行点数においてはライトノベルとすら名乗れないほどの少数しか発行していないにも関わらず、乙一先生や直木賞作家の村山由佳先生など、かなりの有望作家を見出しています。
そして、この方もジャンプ小説・ノンフィクション大賞受賞作家です。


(図2)


デビュー時のペンネームは河出智紀。現在のペンネームは”小川一水”。「第六大陸」「復活の地」などで知られる、ハードSF界の新星にしてエースといってもいい作家の小川先生も、デビューはジャンプJブックスでした。
小川先生は短編「老ヴォールの惑星」で星雲賞も受賞しており、もはやライトノベル作家とはくくられないポジションにいる作家なのですが、その活躍の場はおそらく意図的にでしょうが、きわめてライトノベル的、というか『文庫』にこだわった作品の発表の仕方をしています。
朝日ソノラマ廃業前までは、ソノラマ文庫に多くの作品を発表しており、現在の主流活動もハヤカワ文庫・MF文庫などであり、また出世作ともいえる「導きの星」(担当の主観では最高傑作!)は、ハードカバー上下巻、といった形でもおかしくなかったはずですが、文庫にて全4巻というスタイル。
また、そのほとんどの作品にてイラストを掲載しており、ここまでくるとレーベルいかんにかかわらず、意図的に”ラノベ的にしている”と疑ってすらしまいます。

小川先生の作品はほとんどはSFであることが多いのですが、もうひとつの傾向としては、ある職業や技術を持ったプロと、それに対比した少年少女が出てくることも多い傾向があります。
子供を含めたより多くの人に読んでもらいたいとという意図が、小川先生の作品がハードカバーではなく文庫で多く出ている理由かもしれません。

次回の予定は未定です。

(担当 有冨)

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