岩井の本棚 「本店レポート」 第19回 |
平野綾と小原愼司をむすぶもの
ちょっと前NHK「トップランナー」を見ていたらゲストが平野綾。
何気なく見ているとちょうど今彼女が演じている「二十面相の娘」の主人公、チコの話に及びました。
曰く原作もよんだけれど、最初は演じるのに苦戦したとのこと。
しかし僕がおもったのは全然別のことで「ああ、小原愼司のマンガを、平野綾が読むような世の中になったのだなあ」ということでした。
いまでこそともかくとして、数年前は小原愼司が好きという人は相当細かいマンガ読みの人であることはまちがいありませんでした。
そうですねえ、男性なら、アフタヌーンとコミックフラッパーとコミックビームとヤングキングアワーズとヤングアニマルとサンデーGXと快楽天は最低でも目を通してて、 それ以外に定期的に読んでる週刊誌が10はある・・・程度が求められるでしょうね。単行本派だったら月に50冊以上とか。
そんな奴いないって? いやいや案外いるんですよ。声高に話さないだけで。ちなみに僕はこんなに読めていませんが・・・。 まあかなりの豪腕。そんな細かい人でないと「小原愼司? ああ、僕は好きだけどなあ」などと言い出さなかったものです。
しかしそんな細かいマンガ読みの人でも、小原氏の原作がアニメになり平野綾が読む時代が来るとはさすがに予想してなかったでしょうけど。
それにしても講談社はせっかく「二十面相の娘」がアニメになってるのに、過去作を増刷してくれないのが残念。 二十面相以外では「パノラマデリュージョン」しか、書店では手に入りません。「なるたる」のときもそうですが旧作の増刷には妙に慎重ですね。
だけど僕も小原愼司の良いところが詰まった「菫画報」の増刷は採算取れなくもないんじゃないかと思うのですが、 初単行本である「ぼくはおとうと」はさすがに僕が講談社の中の人だとしても、増刷してもペイできるかどうか悩むところ。
アフタヌーンからでた初単行本、と聞いてピンと来る人も多いでしょうが、やっぱり読む人を選ぶのは確か。
「ぼくはおとうと」ははやくに両親をなくし、姉と二人暮しをする高校生男子の話。
親がなくなった経験から、唯一の肉親の姉と離れたくなく依存する主人公。
でもいつかは離れないといけない・・・姉も弟を養うために、働いていけるという共依存の関係性。
閉じた閉じた話ですが、その閉じ方が妙に不器用でかつセンチメンタルなのが小原氏らしさでしょうか。 人形作家の黒咲も社会との折り合いのつけられなさでいい味を出しています。
日常に潜む非日常と違和感、変な才能・・・「ぼくはおとうと」にも出てくる小原氏テイストは暗さを排したかたちで「菫画報」に受け継がれ、菫画報に心酔し た石黒正数によって「それでも町は廻っている」に発展します。
共通点は主人公の探偵趣味、とっぴな主人公とそれを囲む面々、学園に対する愛と悪意のなさ。
「それ町」が好きな人なら「菫画報」も読めるはず。
しかし「ぼくはおとうと」当時のアフタヌーンは、いい学校には入ったものの、 じゃあ自分がやりたいことっていったい何なのか?それがわからない・・・のマンガ家版という雰囲気がありました。
アフタに載れて、でも作家としての方向性そして売りを見出せないけれど表現意欲だけが有り余った人たちがギザギザと描き連ねているような。
そこが良くも悪くも講談社でアフタヌーンだなあと思うんですよね。
しかし僕がおもったのは全然別のことで「ああ、小原愼司のマンガを、平野綾が読むような世の中になったのだなあ」ということでした。
いまでこそともかくとして、数年前は小原愼司が好きという人は相当細かいマンガ読みの人であることはまちがいありませんでした。
そうですねえ、男性なら、アフタヌーンとコミックフラッパーとコミックビームとヤングキングアワーズとヤングアニマルとサンデーGXと快楽天は最低でも目を通してて、 それ以外に定期的に読んでる週刊誌が10はある・・・程度が求められるでしょうね。単行本派だったら月に50冊以上とか。
そんな奴いないって? いやいや案外いるんですよ。声高に話さないだけで。ちなみに僕はこんなに読めていませんが・・・。 まあかなりの豪腕。そんな細かい人でないと「小原愼司? ああ、僕は好きだけどなあ」などと言い出さなかったものです。
しかしそんな細かいマンガ読みの人でも、小原氏の原作がアニメになり平野綾が読む時代が来るとはさすがに予想してなかったでしょうけど。
それにしても講談社はせっかく「二十面相の娘」がアニメになってるのに、過去作を増刷してくれないのが残念。 二十面相以外では「パノラマデリュージョン」しか、書店では手に入りません。「なるたる」のときもそうですが旧作の増刷には妙に慎重ですね。
だけど僕も小原愼司の良いところが詰まった「菫画報」の増刷は採算取れなくもないんじゃないかと思うのですが、 初単行本である「ぼくはおとうと」はさすがに僕が講談社の中の人だとしても、増刷してもペイできるかどうか悩むところ。
アフタヌーンからでた初単行本、と聞いてピンと来る人も多いでしょうが、やっぱり読む人を選ぶのは確か。
親がなくなった経験から、唯一の肉親の姉と離れたくなく依存する主人公。
でもいつかは離れないといけない・・・姉も弟を養うために、働いていけるという共依存の関係性。
閉じた閉じた話ですが、その閉じ方が妙に不器用でかつセンチメンタルなのが小原氏らしさでしょうか。 人形作家の黒咲も社会との折り合いのつけられなさでいい味を出しています。
日常に潜む非日常と違和感、変な才能・・・「ぼくはおとうと」にも出てくる小原氏テイストは暗さを排したかたちで「菫画報」に受け継がれ、菫画報に心酔し た石黒正数によって「それでも町は廻っている」に発展します。
共通点は主人公の探偵趣味、とっぴな主人公とそれを囲む面々、学園に対する愛と悪意のなさ。
「それ町」が好きな人なら「菫画報」も読めるはず。
しかし「ぼくはおとうと」当時のアフタヌーンは、いい学校には入ったものの、 じゃあ自分がやりたいことっていったい何なのか?それがわからない・・・のマンガ家版という雰囲気がありました。
アフタに載れて、でも作家としての方向性そして売りを見出せないけれど表現意欲だけが有り余った人たちがギザギザと描き連ねているような。
そこが良くも悪くも講談社でアフタヌーンだなあと思うんですよね。
面子がフラッパー連載陣揃い踏み&アフタからは五十嵐大介、小田ひで次、そして黒田硫黄。表紙はOkama。濃い面子だなー。
小田ひで次に至っては現代版チコを描くに当たって、チコ役をエンコー少女にしてしまうという暴挙に(流石小田ひで次)。で石黒正数も参加してるんですが、 チコの叔母の後日談パロディで叔母が便乗本を出す・・・というくだり。
そのタイトルが「おばとおとうと」「叔母画報」「二十面相の叔母」・・・。
石黒氏らしいクスっとしたボケ。この人ホントに小原氏を敬してるんだなあ・・・ってわかりますな。
「ぼくはおとうと」840円。「菫画報」1680円。本店2にて。
※この記事は2008年7月15日に掲載したものです。
(担当 岩井)