岩井の本棚 「本店レポート」 第15回

細かいのいろいろ 3

休み明けに出勤してみると、机の上に見慣れないマンガがおいてあることがよくあります。いじめ本、マゾ本、ヤクザ本にスカトロ本などなど・・・。
で、置いた当人たちに、なぜに机にこの本を置いたのか、と問うとたいてい「いや、なんか岩井さんこういうの好きそうだなと思って」などといわれる。 この歳まで真面目にコツコツ働いてきたのに、同僚からはあの人はいじめとヤクザと糞尿に興味のあるマゾっ子なんだよね、と思われているのかと思うと肩がガックリと落ちます。

今回もそんな感じで「休み明けに、机になんかおいてあった」本中心に放出します。


「ワクワクBOY(男たちの夏)」

このあいだまで本店2のショーケースに参考展示してあったのを見かけた方も多いかもしれません。
おそらく日本中でもヤマジュンを参考展示にする店はまんだらけだけ、それも中野の本店2だけでしょう。
ブッキング版「ヤマジュンパ−フェクト」に収録されているとはいえ、 原著を見たことがある人が果たして存在してるのか? と思うしかない、山川純一のオリジナル単行本。

「やらないか」「ウホッいい男」に代表される素っ頓狂なネームは本作にはあまりありません。
ユーモラスな展開の多かった前作「兄貴にドキドキ」「君とニャンニャン」のほうが内容的には濃いはずです。
とはいえ長年買取をしているぼくもこの本を見るのは初なぐらい数のない本です。
つぶれたけいせいの本の中でも、特にみかけません。ダメ本ハンターだったら所有欲をかきたてられるに違いありません。3150円。


「コミックコンプ増刊 REX恐竜物語特集」

映画公開中に角川春樹が逮捕されたため放映が打ち切られ、邦画史では黒歴史扱いの「REX」。
CLAMPによってマンガ化もされてるのは周知の事実ですが、映画封切直前、こんな増刊号が出てたって知ってましたか?

作はおちよしひこで、映画の直前に発行した増刊号なんだから、 ぶっちゃけ安達祐実似の女の子のひとりも出して名場面集みたいな感じで手堅くまとめればいいのに、 なぜだかREXにインスパイアされた全く関係のない外伝に仕立て上げてしまいました。

まだ公開されてない映画、つまり読者もストーリーを知らない映画のさらに外伝を作ってしまう、ってどうなんでしょうね。
舞台もキャラクターもぜんぜん違うこの外伝を読み、REXの公開を待ち焦がれていた子供も世の中にはたくさんいるんじゃないでしょうか。
それにしたってバブル後もこんな映画に十億近くもつぎ込む会社があったのだから豪気なものですね。420円。

「BE-BOP-HIGHSCHOOL 高校与太郎シリーズセット」

映画のビーバップに夢中になった中学校時代。
今から考えると赤面するほかないです。

短ラン、ボンタン、細いベルトにリーゼント。
ヒロシにトオルに菊リンにシャバ僧・・・いま30代の男性は多かれ少なかれビーバップの影響下にあったわけで、 それをいまさらなかったことにしよう、何ていわれてもダメです。

映画高校与太郎シリーズの哀歌・行進曲・温度・完結編の4冊セット。 完結編が日焼けしてるのと、よく考えると「狂騒曲」がないのですが気にしないで下さい。

ちなみにこの本自体は現在買取していませんので、間違ってもセドってきたりしないで下さいね。840円。


「ヤングマガジン1985年2号 望月峯太郎「フールズメイト」掲載号」

望月峯太郎がちばてつや新人賞を受賞した当時の読みきり。
絵は「バタアシ金魚」時代を彷彿とさせます。
女の子の描き方に桜沢エリカや岡崎京子などの影響が見えますが、 いじめられっ子の不思議ちゃんになぜか恋してしまう・・・というストーリーはまさに望月調。単行本未収録作。840円。


「超愛の人」

成田アキラ著、全5巻。
平凡な日々を送る主人公が、謎の多い美女・空子に会ったことから人生が変わる・・・といったストーリーですが、 3巻以降は様々な心のカラをもつ女性に、愛を感じさせるセックスができるか、という話に転換。
フリチン全裸で深夜の公園をジョギングし、走ってるだけで射精するとか、 エクスタシーを感じた女性が痙攣しながら宙に浮くとか、怒った女が般若に変身とか、とにかく怪描写には事欠きません。
こんな変な本を一部の人しか知らないのは損なので、ぜひみなに読んで欲しい作品。2100円。

「ゆめのかよいじ」

「That'Sイズミコ」で有名な大野安之の作品。
多用される夢風景、巨大な木造校舎、田舎の風習、 妖怪など「ディスコミュニケーション」に影響を与えたのでは?と考えられる良作です。

ですが2001年当時角川より復刊された「ゆめのかよいじ」を見てビックリ。
絵が全部CG化されていて、前作の味のある絵がすべて台無しになっている!

あとがきを読むと大野氏は過去のキャラ絵の稚拙さが気になって全て書き直した、 とありますが、すごく複雑な気分です。

また旧版にはあったレズHシーンがソフトに描きなおされてます。

旧版は少年画報社から発行ですが、ここ数年はめっきり見かけなくなりました。
新版のみ持っていて旧版を読んだことがない方はどちらがいいか比較してみてください。新版630円、旧版525円。

※再入荷群

「バリバリ君」1・2巻

通説では全18巻という話です。
しかし連載一万回を越える超長寿連載なので、 実際には何らかの形で単行本が出てたのではないかという気もしないでもありません。
夜寝る前にバリバリ君を読むと、やすらかに眠れるのでオススメです。
詳しくは「本店レポート第13回」へ。

「一刻館の思いで」

めぞんも来春TV化、管理人さんが伊東美咲、というキャスティングにはビックリです。
しかし石原真理子(映画版)に比べれば100倍マシですが。
詳しくは「本店レポート第14回」へ。525円。

「なんたってドキドキ」

本邦初の「ニードルマンガ家」として名高い矢追町先生。先生の初単行本が再入荷・・・ですが背が焼けていて1050円とお買い得です。
「アヒィン」でピンと来たら「本店レポート第13回」へ。

「いじめリポート 1800通の心の叫び」

日本全国のイジメられっ子の「こんな風にいじめられた!」投書ばかりで構成された告発本。
生涯でイジメに全く荷担したことがない人はまれだと思うので、 ほとんどの人が読むと鬱になって要リタリン状態になる、という本です。
あの「元気やでっ」が1冊まるまる収録されてるのも輪をかけて鬱です。
詳しくは「本店レポート第1回へ」。カバー痛みで315円。

「宮本から君へ」

花沢健吾「ボーイズ・オン・ザ・ラン」が宮本から君へとの類似性を指摘されていますが、 あれは花沢氏の同作への並外れて強いリスペクトだと僕は思っています。
とにかく「ボーイズ・・・」は全青少年と宮本リアルタイム世代にとって必読。
青年マンガの「醜いながらも足掻きつづけることで男として成長する」というテーマがこれほどぴったりくるマンガはありません。
そしてすでに同作を読んでいる方は、リスペクト元の「宮本」を読み、どこが花沢氏なりの現代解釈なのかを解くのもアリです。全12巻。6300円。

余談ですが、先日、同僚の竹下さんと久保田さんが「怪猫・トルコ風呂」というモンド映画を見に行ってきたそうです。
いかにバカ映画かを説明しようとしてついついふたりとも夢中になってしまい、 化け猫の登場シーンで指を猫のように曲げ、顔は藤岡弘みたいにニカーーッ!と抜けるような笑顔で、

「ニャーーーッ!!」

と大声でユニゾン。
聴衆は僕一人。唖然としました。
30近い男どもが深夜にニャー、って猫マネって、どんな状況におかれてるんだろう、オレ? と自問自答しましたね。
ですがその後それが急に恥ずかしくなったようで、何度頼んでもやってくれません。
恥ずかしくなるくらいならニャーニャー言わなきゃいいのに。
母さん、僕はこんなアナーキーな同僚に囲まれて仕事をしています。

今回紹介した本はいずれも9月17日(日)本店2へ出します。

※この記事は2006年9月16日に掲載したものです。

(担当岩井)

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