まんだらけ小倉店 1F コミックス左江内氏の年齢まで遠くない年齢になってから読み返すのもいいものです

今回は中央公論社版「愛蔵版藤子・F・不二雄SF全短編」全3巻セットをご紹介します。

藤子先生の作品について、いまさら担当が多くを語るのも蛇足ですが、この愛蔵版は30代前半から半ばのコミックファンにとっては、FFランド刊行中に発売されたということで多くの読者が手に取ったかと思います。そして、いわゆる子供向けでない作品に、また多くの読者が魅了されたと思います。
後にハードカバーの完全版が発売されましたが、F先生のSFの波に”酔う”という意味では、この大きさ・分厚さのほうがふさわしいように思うのですが。

あらためて読み返してみると、F先生の短編は対になっているものが多いです。
同じようなスーパーマン的能力を手に入れながら、正義の味方から逸脱した「ウルトラスーパーデラックスマン」と、小市民のままの「中年スーパーマン左江内氏」。
同じウラシマ効果を扱っている「旅人還る」と「一千年後の再会」。
宇宙人から見た地球人の不可解さを描いた「サンプルAとB」と「征地球論」。
戦争に利用される巨人「超兵器ガ壱号」と、戦時中に開発された兵器の末路「鉄人を拾ったよ」などなど。
中でも、同じ過去にタイムスリップしてかつての自分に会う内容ながら、最期の余韻がどこかさわやかな「あのバカは荒野を目指す」と、自らの過去に埋没するラストが心底恐ろしい「ノスタル爺」は究極かもしれません。

大人になった今、当時と違った目線でSF短編を読むのもとても楽しいと思います。
純粋に中年サラリーマン左江内氏の悲哀がストレートに理解できる特典（？）もありますし。

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(担当有冨)