2020年9月11日(金)中野ブロードウェイ内MANDARAYで開催

~『少年イン・ザ・フッド』第1巻発売記念トークイベント~
“少年イン・ザ・フッド BLACK BOOK Vol.1”

ここ数年マンガ・アニメ・ゲームの世界でも特にラップ(日本語ラップ)やMCバトルを扱おうとする試みがいろいろ行われ、超人気コンテンツが産まれたりしました。

しかしそのほとんどが志し半ばで力尽き、死屍累々が築き上がった結果、コンプラも含め意外とビジネスに繋げにくく取り扱い注意案件という印象が各所に根付いているのが現在ではないでしょうか。

マンガの世界ではMSCのTABOO1氏による自伝的作品『イルブロス』や服部昇大『日本語ラップの美ー子ちゃん』のようなオルタナティブも産まれましたが、日本を舞台にHIPHOPという概念を正面から描いた作品が出てこなかったという一点にブルーオーシャンがあると確信していたのがSITE (Ghetto Hollywood)氏。

冴えない少年が何かと出会い人生が加速していくという王道スタイルの青春グラフティmeets HIPHOPという直球さにしっかりハードコアな側面も落とし込み、一般層にも「これがHIPHOP」と導くような構成。

HIPHOPを構成する様々な要素をオールインワンにしていくストーリーのバランス感覚は、SITE氏の所属する神奈川相模(相武台~町田)がフッドのラッパー、DJ、グラフティライター、ダンサーを有するクルーSDPの全部乗せ具合。主人公の暮らす川沿いの団地やそこからほど近い繁華街、土地の持つ磁場とそこに集まる人々の在り様も含めて、SITE氏のキャリアの中から生み出された一貫した世界観なのもヘッズ的には見逃せないポイントでしょう。

ちなみに単行本巻末のPUNPEE氏とエド・ピスコー氏(『ヒップホップ家系図』etc)との鼎談の写真はまんだらけ中野店の変やで撮影。今回のイベントにはそんな伏線もあったのです。

イベント企画は連載開始直後から打診しており、その時点で進行には相模原在住のHIPHOPヘッズでマンガ研究者の岩下朋世(@iwa_jose)氏を迎えるところまで決めていたのですが、コロナ禍の中での開催をどうするかという部分で単行本発売直前まで迷いました。

マスク着用・検温・消毒・限定人数・本人確認という基本的な感染対策を行ったうえで限定人数の有料イベントとして開催を決定したのが8月中旬。定員15名のところ50名以上の参加申し込みがありました。

9月11日に開催日を設定したのは、単行本の発売日が9月2日でしっかり読んでから来てほしいというSITE氏の希望から。

当日19時からスタートしたイベントは、SITE氏がサイン本を製作中の会場にそのまま入場していただくラフなスタイルで開始。

グラフティライターであることを公表しているため基本的に顔出ししない作家の登壇イベントというだけでプレミアム感はありますが、如何せんラフ過ぎた感もあり、書けない部分や作品のこれからに関わる書き起こしに向かない内容は参加いただいた方々の胸にしまっていただければ。

マンガに関しては母親の影響が強く虫プロが1967~1973年に刊行していたマンガ雑誌『COM』のバックナンバーが家にそろっていたというエピソードや、“YA小説”フリークであることに加えて「『ぶ〜け』などを読んでいて、24年組より少しあとの作家に影響をうけた、あのあたりの空気感を出したい」という話が引き出せたのは、手塚~少女マンガの系譜を研究対象としてきた岩下氏ならではの化学反応でした。

書き起こせる内容は、だいたい現在WEBに上がっているインタビューでカバーできるのでそちらをどうぞ。

どの記事も質量ともに重厚な内容で作者のSITE氏と『少年イン・ザ・フッド』への期待の高さが伺えます。

上記のカルチャー寄りのアプローチだけでなく、王様のブランチのBook RANKING TOP10で3位に入ったりとさらに予想以上の広がりを見せそう。

トークイベント後はサイン会。字数の多さをタイトにまとめたバランスの良さは流石。さらに書店用の非売品ポスターがおみやげです。
サイン会が終了したのは22:00前とかなり超過していまいましたが、構成をアップデートして2巻以降もサポートできれば思ってます。

SITEさん、岩下さん、参加者の皆様、その他ご協力いただいた皆様ありがとうございました!

そしてまだ体験していない方!ちょうど重版され手に入りやすくなっている今のタイミングを見逃さないように!!

追記:サイン本80冊は9月10~11日の二日間で完売しました。

(中野店:國澤)