岩井の本棚 「2008ベスト」 番外編

まんだらけで実際に売れた本ベスト

いままではスタッフが「2008年に読んだマンガ」のベストをお送りしましたが、
ではリアルに2008年、まんだらけで何が売れたのかをご紹介したいと思います。
2008年1月〜12/31日までの中野店での売上順位です。

まんだらけは戦前から最新のマンガまで取り揃えておりますが、
とはいえ上位に食い込むものは、やはり幅広い層に支持のある新刊、アニメや映画になったもの・・・といった一般的なもの。
まずはそのあたりをふまえてずらっと総合ランキングの上位からいってみようと思います。

1位
「聖☆おにいさん」1巻
中村光


2位
「黒執事」1巻
枢やな


3位
「黒執事」3巻
枢やな


4位
「ONE PIECE」49巻
尾田栄一郎


5位
「黒執事」2巻
枢やな


6位
「聖☆おにいさん」2巻
中村光


7位
「黒執事」4巻
枢やな


8位
「HUNTER×HUNTER」25巻
冨樫義博


9位
「デトロイト・メタル・シティ」1巻
若杉公徳


10位
「デトロイト・メタル・シティ」4巻
若杉公徳

どれだけ売れたかというと「聖おにいさん」と「黒執事」だけで、もう数千冊売れている計算になります。
日本で一番売れているマンガといってもよいワンピですら4位になってしまうのは特殊なのかもしれません。

このあとはワンピのほかの巻、DMC、21世紀少年、PLUTO、ハガレンの新刊・・・と相応なタイトルが続きますが、

25位
「荒川アンダーザブリッジ」1巻
中村光

と突如古本マンガ屋ぽいタイトルが来ましたね。
「聖☆おにいさん」が面白かったから他の著作も読んでみよう・・・という流れです。
増刷がそこまでされていなかったので若干流通量が少ない「中村工房」のほうは351位でした。

33位
「ヘタリア」
日丸屋秀和

いままではすべて新書とB6サイズという定価が4〜600円台の本ばかりでしたが、
ヘタリアはA5サイズで定価も1000円近いので、この売れ方は驚異としかいえません。
それにしてもアニメに伴い、イタリアから文句がくるかと思いきや、
作中でもほとんど登場機会のない韓国なんだぜのほうからクレームがくるとは思わなかったなあ・・・。

34位
「もやしもん」1巻
石川雅之

「菌の世界展」も好評でしたね。
常に在庫が薄い本なので、在庫が常置してれば上位20以内に入っていたと思います。

40位
「くいもの処明楽」
ヤマシタトモコ

BL部門トップ1です。発行がかなり前の既刊だということを考えるとこの売れ方は異常ともいえます。
数的には映画になった「20世紀少年」よりも売れてる計算です。

ヤマシタトモコさんは

「恋の心に黒い羽」
ヤマシタトモコ
(173位)


「タッチ・ミー・アゲイン」
ヤマシタトモコ
(226位)

と上位にランクインしてましたね。

ついでに以下、BL部門ベスト10位は

「僕らにまつわるエトセトラ」
九號
(52位)


「恋の雫」
香坂あきほ
(125位)


「その唇を開け」
三池ろむこ
(164位)


「あかるい家族計画」
もろづみすみとも
(168位)


「恋の心に黒い羽」
ヤマシタトモコ
(173位)


「タッチ・ミー・アゲイン」
ヤマシタトモコ
(226位)


「セブンデイズ」
宝井理人
(363位)


「あかないとびら」
鈴木ツタ
(382位)


「ディアマイミスター」
山田史佳
(同382位)


「うっかりチェリー」
大槻ミゥ
(同382位)


「同級生」
中村明日美子
(同382位)

という結果。

「382位ってたいしたことないじゃないか」
と思う向きもあるかもしれませんが、このランキングはタイトル別ではなく巻数ごとなので、
50位から300位くらいにはワンピの○巻とかハガレンの○巻、
ナルトの○巻・・・といった超定番長編タイトルの既刊がバンバンランキングに入っているので、
ジャンプの定番作品と同等以上にBLが売れている、と考えていただければすごさが伝わりやすいかもです。

もっとも順位に関しては、1年を通してのトータル冊数での順位なので、
話題の新刊でも08年後半に出たものはランキングに食い込めない傾向も多分にあります。
初速だけならばこれら上位5を超えるものもたくさんあったのですが、年間通して売れた数となると及ばないのですね。

さて話を戻しまして。

3年位前は実はランキングの上位が「NANA」「ハチクロ」「のだめ」だったりしたのですが、
08年はこういった一般まで巻き込んでの、突き抜けて売れたタイトルが出なかったため、少女マンガの1位は

35位
「きのう何食べた?」1巻
よしながふみ

になってしまいました。
カテゴライズ的には難しいあたりですが、ここは少女マンガということで。

ちなみにBLを除いた少女マンガベスト5は

「のだめカンタービレ」20巻
二ノ宮知子
(79位)


「NANA」19巻
矢沢あい
(83位)


「NANA」20巻
矢沢あい
(92位)


「純情ロマンチカ」10巻
中村春菊
(95位)

と、作家性の強い単行本は上位には食い込んでこずじまいでした。
BLは300位から400位にかなりの作品が食い込んできたことを考えると、今年はさびしい結果でしたね。

たとえば

「3月のライオン」1巻
羽海野チカ

は459位というランクでしたが、作家の力を考えれば、こんなにランクが低いのは解せません。

BL、少女ときたら成年は何が売れたんだろう? トップはやっぱり

69位
「少女マテリアル」
鳴子ハナハル

発行が夏だったので、もっとはやくに発行していれば間違いなくベスト30位以内に食い込んだでしょう。

まんだらけの売上ランキングでは成年は300位以内に入ることすらまれなのにも関わらず
(前述したようにワンピやナルトよりも売れないとそのランクには食い込めないのです)、
冊数的に考えると実はバガボンドの29巻(つまり最新刊)よりも数が売れている、
それも定価が1000円以上する本が、というとあまりにもド外れた売れ方をした成年コミックだということがわかります。

以下ベスト10は

「独蛾」
月吉ヒロキ
(371位)


「水着彼女」
ぼっしい
(376位)


「ストレッタ」
世徒ゆうき
(741位)


「いぬみみずかん」
いぬぶろ
(771位)


「少女セクト」1巻
玄鉄絢
(848位)


「花粉少女注意報」
小梅けいと
(895位)


「小指でかきまぜて」
雨がっぱ少女群
(同895位)


「初犬」1巻

(同895位)


「Love Selection」
如月群真


「夏蟲」
月吉ヒロキ


「相思相愛ノート」
フクダーダ


「初犬」3巻

だったのですが、新刊ショップのベストとは全く違うラインナップに驚きました。
レオパルドや関谷あさみの新刊は発売時期のズレからかおしくもランクインせずでした。

過年度の作品に関しては、お手ごろな値段のためよく売れた・・・ということもあります。
たとえばランクには入りませんでしたが、お手ごろ価格の過年度の定番作品(鬼ノ仁とか)が結構な数で売れているのには驚きでした。

あと「少女セクト」のように発行から数年たっているのに、売れつづけるタイトルがあるのが中古ショップならではでしょうね。
「ストレッタ」に関しては発売当初、常に在庫が足りずに悔しい思いをしたのを覚えています。

それでは話を総合ランキングにもどして、ですが、あとは気になったところをピックアップで見ていきましょう。

101位
「黒博物館スプリンガルド」
藤田和日郎


242位
「邪眼は月輪に飛ぶ」
藤田和日郎

新刊ではない既刊の中ではスプリンガルドの売れ方には目を見張るものがありました。
もちろん現行条例も上位にランクインしていましたし。

89位
「おやすみプンプン」1巻
浅野いにお

ヤングサンデーレーベルの中では、トップの冊数でした。
浅野いにおは本店ではおととしくらいからプッシュしていただけに、納得の順位です。
「素晴らしい世界」「ソラニン」とも300位以内に入ってました。

168位
「ブラッドハーレーの馬車」
佐村広明

確かに話題の書ではありましたが、かなり人を選ぶこんな本がデスノートの1巻よりも売れている、というのはできすぎです。
これは中野店ならではでしょう。

405位
「臨死!!江古田ちゃん」1巻
瀧波ユカリ


418位
「鈴木先生」1巻
武富健治

発行からかなりたつのに、江古田ちゃんも鈴木先生も未だに売れつづけています。
お手ごろ価格というのも売れている原因でしょうか。

428位
「僕の小規模な失敗」
福満しげゆき


480位
「まだ旅立ってもいないのに」
福満しげゆき


580位
「やっぱり心の旅だよ」
福満しげゆき


627位
「カワイコちゃんを2度見る」
福満しげゆき

福満先生はA5サイズ全般でのランキングで見ると「スラムダンク完全版」とか「となりの801ちゃん」よりも売れてたりします。
これは快挙でしょう。

702位
「孤独のグルメ」新装版
谷口ジロー

やっぱりみんな待ってたんですね。もちろん僕も買いました。
浅草の甘味処に、明らかに場違いなオタク臭のする男子が多数つめかけ、
みんなで騒ぎながら写メで豆かんを撮影したりして店主の顰蹙を買ったのでは・・・と危惧するのですが、どうでしょう。
聖地めぐりを否定するわけではないのですが迷惑にならないようにだけは心がけたいものです。

1000位以下でも、ずーっと表を見てて
「デメキング売れてるなー。これ新刊書店だとこんな上に来る本じゃないんじゃないかなー」とか
「あずまんが大王って連載終了してかなりたつのに未だにこんなに売れてるってすごいよなー」とか
「刑務所の中、って文庫のほうが未収録話が含まれてるのに、旧装のほうが売れるんだなー」とか
「飛びぬけて売れてはいないけどコミックLOの単行本は軒並み上位だなー」

なんて、

順位が下のほうを古本屋ぽい視点で見てたんですが、
ここが新刊書店ではなく、ブックオフではなく、
ただの古本屋でもないなと思ったのは年間で50冊近く売れているこんなタイトルたちでした。

「不思議町怪奇通り 藤子不二雄A 怪奇短編集」


「少女椿」
丸尾末広


「Sink」
いがらしみきお


「UKアンモラルキッズ」
ひぢりれい


「Blue」
魚喃キリコ

既刊とはいえ、たとえば「ぼくオタリーマン」や「今日の早川さん」よりも全然売れてるのです。
UKアンモラルキッズなんて、何年前の本だろ? 驚きですね。

しかしもっとも驚いたのはコレ。

「真・現代猟奇伝」
氏賀Y太
推定2000位

知る人ぞ知る、グロで有名な氏賀Y太先生。
氏賀先生があの凶悪事件「女子高生コンクリート殺人事件」など猟奇事件をテーマに描く・・・という、とてつもなく陰惨な単行本。
グロの極北のひとつで、多くの人は途中で読めなくなるのではないでしょうか? もちろん絶版です。中古でしか手に入りません。

読む人はもちろん選ぶし、常に棚にある本でもないのですが、この冊数・・・。
ドージンワークの1巻よりも売れてるってどういうことでしょう?
しかしこういったキワの部分がきちんと探している人の手に渡る、というのがマンガ専門店ならではという気がしなくもありません。

というわけで2008年実際に売れた本、でした。

来年のベスト1はもちろんですが、じゃあ「真・現代猟奇伝」はどれだけ売れるのか? 気になりますね!
え、気に、ならない・・・?
まあとんだグロですからねえ、仕方ないかなあ・・・。

※この記事は2009年1月21日に掲載したものです。

中野店 岩井

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