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雑誌狩りの醍醐味のひとつは、未知との遭遇である。

絵が似ていたり、ストーリーが似ていたりすると、 変名、もしくは、もとアシスタントではないか、などと推察するところにそれはあるが、 それがただ銭の為に(と思われる)モロパクしている作品と出会うのも、かなりうれしいのです。

そんなわけで、「実話雑誌」の昭和45年・8月号収録 永山洋の「昔の彼女」である。
見ていただければ分かると思うが、つげ義春「もっきり屋の少女」80%と、「ゲンセンカン主人」10%、他10%のモロパクである。

無知な赤い靴のために体をはるコバヤシ チヨジは、 口元にエロぼくろのあるイヤリングをつけた生活のために寝る女に、僕は、オレに変わってしまっている。

つげ義春のキャラクター達は、ローマンスに溢れ、 「結局、つまり・・・僕はこの土地の言葉づかいに興味を持っただけなのさ」などと、 21世紀の自分が感情移入できる、つまりは、僕であって、 パクリの永山洋のキャラクター達は2回もSEXをするにも関わらず、エロささえもつげには及ばない。
にも関わらず、こんなものを見つけると、うれしいのです。探し続けてしまうのです。

21世紀の僕たちは、つげのキャラクターよろしく、33年の過去から、ほんやら洞のべんさんに「するとお前さまは不遇なんだね」と言われたがり続けているのかもしれない。

辻虫








永山洋「昔の彼女」(上)

つげ義春(下)