
昭和二年、日本の前衛文芸に大きな影響を与えた雑誌が2つ登場します。1つが西脇順三郎が留学から持ち帰った前衛活動としてのシュルレアリスム、そして慶應大学での彼の講義を中心として集まった上田兄弟や瀧口修造たちが作り出した日本最初のシュルレアリスムアンソロジー『馥郁タル火夫ヨ』。もう1つが『GE・GJMGJGAM・PRRR・GJMGEM』といった形で日本の前衛芸術を先導していた北園克衛による『薔薇・魔術・学説』。

薔薇・魔術・学説では西欧のシュルレアリストたちの翻訳を掲載しエリュアール、アラゴン、アルトーらを紹介。第三号には、北園克衛、上田敏雄、上田保の署名で、シュルレアリスム宣言が発表されてます。また、稲垣足穂、石野重造、小野敏、田中啓介、山田一彦といった当時の芸術の最前線にいたメンバーたちが集まっているところも魅力的です。(稲垣足穂は第一号以降参加していませんが...)そして冨士原清一や上田保といった活動の中心人物でありながらなかなか著作が入手しにくい人たちの作品が読める機会でもあります。今回販売する復刻版では北園克衛本人による薔薇・魔術・学説の回想という小冊子が付いてきます。戦前芸術活動の興隆を本人の文章でよめる貴重なものですので、ぜひご一読いただきたいです。
シュルレアリスムには前述した2冊の雑誌グループがあったのですが、これらは早いタイミングで合流、融合し、昭和三年に『衣裳の太陽』という雑誌を発行します。これにより東京のシュルレアリストの作品はすべてこの雑誌に集められる事になります。そして『衣裳の太陽』の影響により、後にシュルレアリスムの国際的オーガナイザーとなる山中散生が活動に参加、名古屋でもシュルレアリスムの熱が広がっていくことになります。
シュルレアリスムに傾倒した山中散生はブルトン、エリュアール、ツァラなどと文通し、瀧口修造と共に日本初の本格的シュルレアリスム展覧会の海外超現実主義作品展を開催するにいたります。その他シュルレアリスム詩や理論の翻訳や紹介をメインに活動、画家であり超現実写真集『メセム族』でも知られる下郷羊雄と共に「ナゴヤアバンガルド倶楽部」の創設など活動は多岐にわたりました。
紹介者や翻訳家、あるいは批評家としての色が濃い彼ですが、詩集作品集も発表しており、そのうちの一つが今回販売する『砂の楽器』です。


『砂の楽器』は戦前に発表した作品『室内』と、戦後に描き下された『砂の楽器』を収録。代表作である夜の噴水の続編『続・夜の噴水』などが描き下されています。


表紙や挿絵は当時交流のあったダリの描きおろし。50部限定の本書では背が革製、毛筆署名入となっています。豪華です。
戦前日本のシュルレアリスムというのは発祥の西欧に比べ、精神性の部分が大きく異なります。フランスでのシュルレアリスムは第一次世界大戦を経てトロツキーの革命思想史影響を受けた芸術による革命運動なのですが日本での運動にそういった意味合いは薄く、萩原朔太郎も「シュルレアリスムはインテリがエスプリぶっているだけで面白くない」(うろ覚え)などと現代詩雑誌で発言し西脇順三郎と激しい口論を繰り広げていた覚えがあります。個人的にも西欧の精神性に基づいた作品の方が好きなのですが、そうでないからこそ日本語という言語、言葉の純粋な部分が詩が深く混ざり合い数々の作品が生まれていったとも思います。前衛芸術、現代アートに興味がある方にはぜひ手に取っていただき、戦前の前衛芸術に身を投じた人間たちに思いをはせて欲しいです。
・こちらの商品は2/8(日)まんだらけ札幌店海馬コーナーショーケースで販売します
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札幌店 串
