人類には早すぎたフェチまみれSF、林崎文博『ガブメント』

新年あけましておめでとうございます。

今年もあらゆる世相を横目で見つつ頭の中は漫画とおもちゃのことばかりの我々ですが、どうぞよろしくお願い致します。年末年始(12/28~1/2)はまんだらけ一同、老いも若きも全員コスプレでお出迎えしておりますので、ぜひ物見遊山にお出でください。
改めまして初めまして。こじらせ系ショタコン中野店白石です。
せっかくこの場を借りるのだから初登場&しかも新年一発目!は凄まじくニッチなやつを特攻(ぶっこ)まなきゃだろうと思ったので、こちらの作品を紹介します。

白泉社/林崎文博『ガブメント』全4巻 

一言で言うなら〝デブケモ×ショタホモ×ディストピアSF〟。既にだいぶ何かが深刻であることがお分かりいただけるかと思います。ではまず、表紙・裏表紙における驚異のキャンタマ率をご覧ください。

画像1(表紙)_R

画像2(裏表紙)_R


パンツ、スク水、レオタード、ふんどし、あらゆる着衣から観察せられるオス諸君の秘宝。もう「好きなんだな」としか言いようがありません。この表現に対して一切のツッコミをしない手練手管の皆さま、中身に参りましょう。

画像3(ポプラコスモス)_R


左:主人公ポプラ。男の子なのに赤面するかべそかくかの2択しかない。右:ヒロイン・コスモス。クジャクの女の子。中盤以降はポプラよりはるかに主人公然としてくる。まぁここまでは普通ですね。
舞台は砂漠化した未来の地球。自由に生命をコントロールできるようになり、あらゆる生物との異種交配を経た「人幻(ニンゲン)」が散在して暮らす世界。この人幻という存在が特徴的で、見た目は二足歩行でもそれぞれに○類○目○科○属と図鑑のような種族名があり、どちらかというと人間ではなくヒエラルキーのある動物として描かれます。このへんは市川春子の『虫と歌』に出てきた、人間に擬態する昆虫と似た要素があります。よってかなり薄情で、仲間が死んでも「ちぇっ」で済む、自身の生存しか考えない、共食いがあるなど至極動物的な行動理由のみで生きています。序盤からこの違和感が重低音のように響いていて、SFといってもあんまり夢と冒険☆ってな感じにはならないんですよ。また回帰祭と呼ばれるイベントがあり、生産能力を失った個体を溶液に溶かして回収し、新しい個体を配給してもらうというおぞましい社会システムで成り立っています。そのシーンがこちら。

(市川春子の『虫と歌』

画像4(回帰祭)_R


回帰祭は楽しくてキレイなお祭りとしてのさばっちゃってる上に、このウサギ?が言っているイヤータグに個体の全情報が記録され、一人でも暴力行為をふるった者がいれば集落ごと消されるという破竹っぷり。その代わりに「ケモノ道」という殺傷OKの無法地帯があり、そこで狩りをするのが娯楽の一環。...といった感じでなかなかきわどくてしんどい世界観のハズなんですが、ページをめくるたびにいかんせん表紙の通りのフェチ祭りであります。

画像5(母上)_R

画像6(ガンマン)_R

画像7(団長)_R

ムチムチ完熟ボディの母上から何かがおかしいガンマン、謎のコウモリばばあまで。登場人物の幅もなんかよく分かんなくなってきます。しかもエロシーンが多い。
実は生命操作の果てにをY染色体を失った世界で、主人公のポプラは唯一まともな精子を持つ「男の子」なんです。よってディストピアなハーレム状態でオナニーも知らない童貞が♂♀問わずあらゆる異形の者達に寝込みを襲われるビビットな展開に。そのくせ上記のように割と骨太なSF設定なので、絶妙なバランス感覚でもって読み進められてしまいます。
と、ここで真打ち登場。

画像8(バズホーンA)_R

画像9(バズホーンB)_R


こちらが真のヒロイン、バズ・ホーン。作者の本命は明らかにこっちだったようで、プ二プ二腹のモフモフデブケモっ娘がとにかく大活躍。しかもカワイイ。超絶カワイイ。このジャンルに目覚めてしまったら片道切符ですけどぜひとも行ってらっしゃいってくらいに愛が詰まってます。ケモ、ことにデブケモ♀なんてのを商業で安定供給してくれるのは今の所この作品しか無いんじゃないでしょうか。しかし悲しいかな、この子が登場する3巻発売時に打ち切りが決まったらしく、その後は力技でストーリーが進んでいきます。それでかえって吹っ切れたのか、更なる趣味嗜好が投入されます。

画像10(ケモホモ)_R

画像11(スク水)_R

画像にあるのはすべて雄。ああおいしい...。そんで極め付けはコレ。

画像12(温泉回)_R

最終話がまさかの温泉回。セリフもキレッキレだしこの全力疾走っぷりには脱帽です。むしろここまで掲載し続けた2010年当時のヤングアニマル嵐の懐の深さよ。ちなみに消化不良の部分は最終4巻にダイジェスト的に5ページ描き下ろされており、鉛筆漫画ながら「ああ...こうしたかったのか...!!」と伝わる濃度。この全体的なぶっ飛び具合にグッと来たファンも多いようで、同人でもなんでもいいから続きが読みたいという声がちらほら(自分も然り!!)。雑誌にはいろいろ大人の事情があるのでしょうが、下手に衒ってしまうよりも突き抜けちゃった方が、読者はついてきてくれるんですよねきっと。

作者の林崎文博は『つきあってよ!五月ちゃん』→ヤンキー漫画→『ガブメント』→ロリ漫画→人妻漫画という「どこから来て、どこへ行くのか」的な哲学的命題にふさわしいルートを辿っており、かつほぼ100%ムチムチボディが登場します。異色SFはこの1作だけみたいですけど。

昨年は『モンスター娘の日常』のアニメ化を皮切りに、ようやく人外ジャンルが陽の目を浴び始めた年でした。
ケモや人外をモチーフにした新刊コミックもたびたび見かけましたが、「もともとその畑にいる人」を掘り起こして引っ張ってきた作品と、「商業のために人外を描いてもらった」作品ってなんとなく分かるんです。『モンスター娘』のオカヤドも、初めはwebでモン娘とのいちゃエロ1ページ漫画を山のように書き連ねていた人ですしね。
ケモでもショタでも、作り手がどうしようもなく萌えながら描かれたキャラクターは、やっぱりかわいいしかっこいいし色っぽく見えるもんです。そういった点において『ガブメント』は間違いなくガチの方角を指す漫画ですので、ちょっと興味がわいた人はお手に取ってみてください。でも責任は取らんぞ。

ニッチな作品において「なんでだよ!?」は野暮の極み。襟を正し、その先にある熱量を見に行こうじゃないか。

(中野店/白石)

林崎文博の作品一覧はこちら 

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人外×打ち切り×少年漫画=アイアンナイト
フェチ×ロリショタ×哲学=ディスコミュニケーション

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