岩井の本棚 「本店レポート」

コンプレックス 第1回

コンプレックス3Fは少年マンガとビンテージのフロアです。

少年マンガコーナーではすでに告知されているように近年のジャンプ全初版帯付セット、雑誌、1点もの限定ものと 、滅多に出ないもの、まんだらけ初出品のものなど数多く取り揃えています。
さらにはコロコロボンボン系、SDガンダムにニューウェイブコミックと、 トピックスに載ってはいなくとも、ふつうにこの棚の取り揃えの完成度を考えると、まんだらけ全店でも最強に近く、 マンガ初心者からハイエンドユーザーまで飽きさせることはない棚だと思います。金額も100万近いものから1冊100円のものまでさまざま。

しかしマンガの楽しみという観点からいえば、100万のものが100円のものの万倍楽しいというわけではありません。100円のものでも楽しめるものは大量にあります。
希少価値はともかくとして、マンガの楽しみに価値を与えるのは、読んだお客様自身です。

今回僕が取り上げたものは僕が楽しめたもの。好きなもの。人に勧めたいものです。
取り上げた基準には、金額の多寡はあまり関係ありません。こんな本あるんですよ、これはこういう経緯の本ですという紹介と報告がメインだったりします。

このように、コンプレックス3Fにはそれこそあまたのマンガがそろえてあります。
自分が楽しめる珠玉の1冊をさがすもよし、自分だけのツッコミを飛ばせる本を見つけるもよし、です。

また、僕らができるだけ数多くの種類のマンガを棚にそろえようとするのは、すべてのマンガを探している人の探求に答えたいからです。

アマゾンで本を探すのでは味わえない、探しているときの愉悦そして焦燥と感傷。
見つかったときの、脊髄から温かいものがジワっと体中に広がるような独特の身体の熱さ。
コンプレックスはマンガと人のかかわりにおいて、そんな特別な出会いを得られる店でありたいと考えています。

数本の指先があまたの本の背表紙をたぐりたどりつくさきに、あなただけに何か特別な光を放つ本に出会えますように。

マンガを愛するすべての人に。コンプレックス3F。

「赤マルジャンプ」


赤マルジャンプに関しては本店レポートのバックナンバーにも少し触れていますが、 コンプレックス用に貯蓄していた在庫、きっちり出します。
近年から90年代初めまでかなり揃ってます。とりあえず何が掲載されているかはあまりに膨大になりすぎるので、出す号のリストは以下で。
新連載や話題作で急騰しやすいため、ジャンプファンはピンポイントで狙っている号があるハズ。抑えるなら2006以降ですね。
この中から次世代のジャンプの人気作家が生まれる可能性があるんですから。
SPが春、SUが夏、Wが冬です。

1995su(木多康昭「仮面の告白」)
1996su(尾田栄一郎、武井宏之、久保宣章(久保帯人)が揃い踏みした号。すべて既収録)
1996w(木多康昭「海に生くる人々」鈴木央「小さな街角の夢」武井宏之「デスゼロ」→既収)
1999sp
1999su(江尻立真「Oasis Dancer」多摩火薬(西義之のユニット字の名前)「サバクノオオクジラ」)
2000sp
2000su(しんがぎん「SOLAR POWER」→最後の作品)
2001w(西公平「倭神礼賛」)
2002sp
2003sp(天野明「バクハツHAWK」)
2003su(福島鉄平「red」)
2004sp(森田まさのり「all the way dawn」西義之「ムヒョとロージー」プロト1回)
2004w(福島鉄平「ナイン」藤山海里「グラスアイランド」)
2005su
2006sp
2006su(河下水希「彼女と夏と僕」荒木飛呂彦+大亜門「もて王サーガ外伝」)
2006w(篠原健太「SKET DANCE」)
2007sp
2008w
・青マルジャンプ(荒木飛呂彦特集)
・e-ジャンプ(鳥山明「ヒョータム」CD-ROM未開封)
・ジャンプギャグスペシャル2005(澤井啓夫と鳥山明のコラボ「ドラゴンボール」)
・増刊ジャンプリーダーズカップ97

「ジャンプ販促用チビTシャツセット」



詳しいことは分かりませんが、書店に貼る販促展示用のもので「HUNTER×HUNTER」「シャーマンキング」「封神演義」「ヒカ碁」の4作品のプリントがされた2枚のチビTのセット。
ビニールで密封されており、未開封です。
作品が裏表にプリントされており、チビTといってもまあ3歳児くらいしか入らない大きさで実用性はないですが、 「この時代のジャンプって地盤沈下とか言われてたけど、やっぱ面子的にすごいよな」と感じちゃいますね。
この他にワンピやナルトもあったわけなので。

「アフタヌーンシーズン増刊全セット」


アフタヌーン本誌の姉妹紙だった季刊・シーズン増刊全14冊セットです。
くわしくは本棚/本店レポート第16回をご覧頂きたいのですが、本誌で人気の作家を連作で載せたり、 四季賞の印象作を掲載したりと、きちんとした形で単行本に入ってないものがあるので侮れない雑誌でした。気がついたら出ていて、気がついたら買い忘れてたという人も多いでしょう。
蟲師を生み出したことが大きな功績といわれる本誌ですが、やはりあの絵をきちんとカラーで読めるのは嬉しいですね。

あと芦奈野ひとし「PositioN」が増刊分6話そろいました。
石黒正和(正数)の「ヒーロー」とか平野耕太の未収録とか細かい部分でも拾える本です。14冊4200円。

「カラフル萬福星」12号〜22号(最終号)不揃いセット


ビブロスがリブレに引き継がれ、やっとこ手が廻ってきたのか旧ビブロス時代のBLコミックの復刊が行われてますが、 おなじくビブロスが版権持ってたカラフルBeeとかエルフィックスの過去本は宙に浮いたままです。まあ復刊しても今売れるのかといったら微妙なモノもあるにはあるのですが。
同じく宙に浮いているのがこのカラフル萬福星。オオシマヒロユキのジャケ画がポップ。

だけど当時コンビニに置いてたっけかな? 当時A-10のロードオブトラッシュ読みたさに立ち読みしてた記憶がありますが(トシが知れますな)、 前嶋重機のカラー作品がけっこう隔号ペースで載ってたり、しけたみがの(野上武志)やら猫井ミィがあったり、「おそらの迷子」に収録されなかった田中浩人の作品があったり、 あとあるまじろう(安藤慈朗)・栗岳高広なんかも癒されますね。

快楽天になれなかった雑誌・・・としてどうしても亜流のイメージが強い同誌ですが、廃刊の年にコミックLOが創刊されています。
この年は成年コミックにとってなにか変わり始めた年だったのかもしれません。
いずれにせよ僕としてはなかなか忘れられない存在です。12号〜22号のみの11冊セット。2100円。

「ホットミルク」1〜3号


いやー萬福星といえばこれを出さざるを得ませんね。
新生ホットミルクで驚愕したのはロードオブトラッシュの続編が載ってて、 しかも本編で掲載誌は「ここはいっつもバツグンにおもしろいカラフル萬○星です」と言い切っていたりしてて爆笑しました。 しかしこの5年でA-10先生も絵柄が変わったんだなあ・・・と実感。

にしてもホットミルク作家陣の豪華さってどうしたものなんでしょうか。
石恵に松本ドリル研究所に鬼ノ仁に如月群真に玄鉄絢に・・・って。
380円の中綴じ誌でここまでやられるってのは、深夜2時台のアニメなのに、 うっかりセルで秒24枚のフルアニメ作っちゃった・・・もしくは「漫画サンデー」に大友克洋がカラーで描いてる・・・みたいなムダな豪華さが最高ですね。
1〜3号で3150円。

「大友克洋特集号BRUTUS+ヤングマガジン2001年21/22合併号」


大友克洋といえば去年発売されたブルータスの大友特集は良かった。
久しぶりの新作「公園」もわざわざ別冊子だったり、大友にインスパイアされたクリエイターも多岐にわたっていてそれでいて新鮮な面子でしたし。
その特集号と、何の予告もなく突如掲載された4ページのカラー作品「ORBITALERA」が掲載されたヤンマガ2001年21+22号のセットです。

とにかくこの絵を見ていると、CGが大友克洋のカラー絵を超えることってできるのだろうかと感じてしまいます。
AKIRAが今年めちゃくちゃな勢いで、今の10〜20代の若い方に売れていますが、同じコトを感じた人多いでしょうね。5巻の表紙、これCG?って。
しかしこの号のどこを見てもなぜいきなり大友克洋がいまさらヤンマガで?という疑問は解けず。唐突な掲載に感じますがどなたか事情を教えてほしいものです。

「ホップステップ賞SELECTION 17」


95年ホップステップ賞の受賞作を収録したもの。
ジャンプには手塚賞/赤塚賞が最も大きな扱いですが、新人のための賞で最も長く続いていたのが「ホップステップ賞」です。
尾田栄一郎をはじめ、現在ジャンプを背負う大作家の多くがはじめホップステップ賞受賞者だったりします。 賞への案内に「プロへの最短コース」とあるのはあながちウソではないでしょう。

たとえば手塚賞は歴史があり大きな賞ではあるのですが、トップである「入選」がめったに出ないことでも有名。ここ10年で3回しか入選がでていません。
赤塚賞に至っては入選どころか準入選も出ず、大半が佳作どまりです。しかも両賞とも、入選、準入選受賞でも、モノになった作家があまりに少ないことでも有名です。

なのでその当時は手塚赤塚賞で1発狙うよりも、ホップステップ賞で何度か印象的な作品を残すことが、新人のデビューの早道だったわけです。
現在も手塚赤塚賞を目指すよりは、トレジャー新人漫画賞で佳作を何度か取って赤マルジャンプ掲載の道を選んだほうが絶対早いハズ。金未来杯にノミネートされたら勝ったも同然です。

ホップステップ賞受賞者で、デビューの決まった、もしくは決まりそうな新人は、併載ですが単行本に載せてもらえました。 95年度受賞作から選ばれた17巻には木多康昭「仮面の告白」(前述赤マルジャンプにも掲載号あり)と、村田雄介 「パートナー」が載っています。

木多康昭は受賞時既に25でしたが、赤塚賞もたしか受賞していたはず。
集英社の期待の大きさが分かろうというもの。630円。

「ホップステップ賞SELECTION 6」

90年受賞作収録の6巻は和月伸宏の受賞作「北陸幽霊小話」が収録されています。
高校在学中に手塚賞の佳作を受賞し(当時としてもこれは早い)デビューへの道を少しずつ歩んでいた当時。 絵のレベルが開発途上なのは当然ですが、喜怒哀楽の顔の表情の基本はこの頃と今でほとんど変わらない、つまり当時から基本的なレベルがかなり高かったことが伺えますね。

「ホップステップ賞SELECTION 18」

95〜96受賞作収録の18巻には岸本斉史のデビュー作である「カラクリ」が掲載されています。
ナルト単行本には今のところ未収録。

絵柄はナルトの初期の画風に似てるし、舞台は近未来の日本みたいな雰囲気の異世界、主人公は国家の隠密、千鳥みたいな技が出てきたり・・・とナルトファンにはいい意味で苦笑いする箇所多い作品。小口日焼けがけっこう入っています。
2100円。

「柳生烈風伝連也」野口賢

90年代初めのダメファンタジーマンガ、またはバスタード・インパクト以降の影響からか
「男は肩当てつき鎧に、背中マント」
「女はブラジャーとパンツみたいな鎧、ヘソ出し」
「敵はモビルスーツみたいな重装甲鎧」
「武器は日本刀、主人公剣士」
というベタな展開の「柳生烈風剣連也」。

物語はぜーん然破綻してますが、要塞の名前がザンジバルだったり、敵がハイゴッグそっくりだったり、かとおもうとバスタードの影響がやたらと強かったり、なかなかにヘンなマンガです。

わりと探している人が多いのか、この作品入荷するたびに長年ずっと売れつづけている稀有な作品。 僕は割りと、よく見る本だな・・・と思ってましたが、現状で全まんだらけでも数冊しか在庫がなくなってしまいました。
中野でもそういえば久々の入荷です。

僕の上司は「ダメ密教マンガが来る!」といっていますが(同感)、僕はそれプラス、これ系の「ダメ鎧マンガも来る」と思う。420円。

2001マガジンFRESHプラス1998/4・5合併号 赤松健「ひと夏のKIDSゲーム」「いつだってMyサンタ!」掲載号セット

「ひと夏のKIDSゲーム」は赤松健がマガジン新人賞を受賞した作品ですが、このデビュー作は長いこと封印されてきたのか、93年9月の受賞時のマガジンFRESHと、 この2001年GW発行時のFRESHの2回の雑誌掲載のみで、最もラブひな人気の高かった当時ですら単行本収録はされないままでした。
内容的には赤松先生らしいお色気サービスは薄く、当時の平均的ラブコメですが、未見の方は気になる存在でしょう。

また収録されている赤松先生インタビューが濃くて、デビューから現在までの作品について自己言及しているのですが、 ラブひなヒットの原因は?と問われて「キャラクターですね、各々のキャラクターが立っているからだと思います」と続くのはともかくとして結論が 「私は(マガジンの中では)まさに水中専用ズゴックです」になってしまうのが不思議。
赤松先生が、「俺、ズゴック」と発言した・・・というエピソードはまだ広がってないハズ。いいエピソードですな。

「いつだってMyサンタ!」は収録されている(ただし単行本時と若干の修正はある様)のでオマケ程度に考えてください。2冊で1260円。

「アブラカダブラ」Sound Horizon Revoインタビュー

赤松先生で思い出したこの雑誌。表紙は藤真拓哉「ネギま!?neo」ですが、中身はというとモンスターハンターや三国志大戦開発秘話のコミカライズ。 増刊ファンタジーコミック雑誌という位置付けですが、なぜかそれにそぐわないものが載っています。

それはSound HorizonのRevo氏と、竹下けんじろう(竹下堅次朗)の対談。
この号にはSound Horizonの1st「Elysion 楽園への前奏曲」の「恋人を射ち落とした日」を竹下先生がコラボでマンガ化しているのですが、その縁で対談が実現したようです。対談は3P収録。

竹下先生がかなりのサンホラファンということもあるのでしょうが、言葉の選び方や楽曲への拘りを語るRevo氏。読ませる対談です。
これはRevo氏と竹下先生の持つ、ロマンや美意識が割りと近いが故ではないでしょうか。 竹下氏といえば少女がひどい目にあう作品が多いことで知られていますが・・・あわわわ。

でガンスリのアルバムをサンホラが楽曲提供している縁からか、「緋色の風車」を相田裕がイラストでコラボ。
相田氏といえば少女が痛い目に逢う描写が多いことで知られていますが・・・やっぱりこの3者も世界観を共有している感が・・・。 ていうか、読者対象が小中学生の雑誌に載せるなこんな貴重な特集! 対談、漢字全部ルビ振ってるくらいだし、もっといい媒体で掲載してやれよ、講談社!!って気がメチャクチャしますけど・・・。2625円。

「サンデーGX2005年8年」

この号にはハガレンの荒川弘の読切「RAIDEN18」が掲載。
こっちはフランケンシュタインがモチーフで、錬金術つながりといえなくもない。
読み切りということもあってギャグも多くて楽しめます。
このサービス精神の豊かさが荒川先生のよさなんですよねえ。もちろん単行本未収録。1575円。

「ヤングマガジン・ダッシュ」


僕は高校卒業したらクルマと酒が趣味の筆頭になるような地方都市生まれということもあり、 自分も周囲もなかなかのヤングマガジンっ子でしたが、増刊系ヤンマガ(別冊ヤンマガ・海賊版・黒BUTAなど)を読んでる・・・という友人に出会ったことがありません。もちろん僕も読んでません。

この「ヤングマガジン・ダッシュ」に至っては、過去にこんな雑誌出てたのか!!って驚きました。見てくださいこの表紙のダサ加減。これぞヤンマガ。これぞ黒BUTAイズムです。

ツルツルテカテカした素材のピンク服着たネーチャンが7人(それもうち一人はテンテン)、 そしてそんな緊張感のまるでない娘達にテニスの格好させたり、必然もなくデーモン小暮のマネするデブ男が登場するという、センスないグラビア。

表紙見ているだけで気持ちは萎び、足の指先から力が抜けますね。
ところが古本を好きになると、こういうダメなのが無性に恋しくなったりもするのも事実です。
事実なのです。

そんな雑誌になぜかカネコアツシの読切「ガソリン・アレイ」が掲載されています。
「ロックンロール以外は全部嘘」のころからもさらに絵は進化しつづけ、この当時としてはヤンマガに全く染まらない絵柄。
スラムで希望もなくたむろする若者たち、ドラッグ、町のド真中から石油を掘るといって穴を掘る町のオヤジ・・・と、無国籍な匂いのする近未来日本の描き方は90年代のマンガっぽいですね。
1575円。

「ぱふ99/11号&05/12号 平野耕太インタビュー2冊セット」


平野耕太へのインタビューがあまりに面白すぎるということで話題になった「ぱふ」の2005年12月号。

もともと「吸血鬼マンガ」特集でインタビューしているのに、吸血鬼の話自体、ほとんど出てこないのが素敵。 酒入ってんじゃないでしょうか。ツッコミ鋭いインタビュアーとも息ピッタシです。

「ワニマガジン原稿返してくれねえからな」とか、しかし云っちゃっていいのでしょうか。 ヘルシング巻末の後書きとまったく口調が変わらないのが素晴らしいですね。
99年のときのほうがやや大人しめですが、これはどちらかというと編集とインタビュアーの癖によるものでしょう。

「ぱふ」でのインタビュー、99年11月号(ヘルシング2巻発売時)と、この2005年12月号(OVA化発表時)をまとめてセットでどうぞ。1050円。

「いたずら-次郎の場合-」

手前味噌ですが詳しくは「マンガけもの道 第5回」をご覧下さい。

初読から数年経ちますがやっぱり「いたずら次郎」は面白いですね。
少女へのイタズラを繰り返すペド青年が捕まるまでという救いようない話が、「そんなトラウマがあるのでは仕方がない」みたいなイイ話に見えてしまいがちだから怖い。
トラウマがあろうがなかろうが犯罪は犯罪ですよ。

今回巻末の記載を読んだら族巻が出ていたことに驚きました。
タイトルは「絆」でまたもや絵は浅井まさのぶ(広岡球士)。
「校内暴力、母子相姦はなぜ起きる!?上下2巻。乞うご期待!」とあります。

こんな本見たことない! ほんとに刊行されたのかな? 謎です。2625円。

「呪いの盲猫」好美のぼる

くわしくは「マンガけもの道 第26回」をご覧下さい。

モザイクで消された部分の下にはどんなサベツ発言があったのか? あまりにアナーキーな化け猫奇談。
好美節がこれほど炸裂しているのは新書時代だと「あっ!生命線が切れている」くらいではないでしょうか。2625円。

「デビルゲーム・悪」


かつてSPA! でも紹介したことがある「デビルゲーム悪」。
どんなものかというとゲームブックのマンガ版、それも「悪の人生ゲーム」。
出だしからしてモテない男が欲求不満、さあどうやって性欲を解消すればいいんだ?

電車で痴漢をする→10ページ
下着ドロをする→14ページ
のぞきをする→16ページ
レイプをする→20ページ
金で済ませる→26ページ
オナニーでがまんする→28ページ

選択肢のうち4つが犯罪というのはいただけませんね。
しかもオナニールート選ぶと「君には悪の素質はない! 一発コイて寝てください」とバカにされ即バッドエンドです。ガッカリですね。

じゃあレイプするか、と思って進んでみてもしばらく経ったら御用。
または「君は冷徹なレイプ魔だ! おめでとう!」。・・・いやうれしくはないなあ。

のぞきから成り上がってインチキ商法の会社を構えたり、ストリップでまな板ショーやったりと、とりあえず全ての選択肢を進んでみるだけでけっこうな時間もかかるしなかなか面白いです、コレ。
1575円。

「ザ・スクリーマー」

ゲームブックで思い出しました。コレ。「ザ・スクリーマー」。
JICC出版局がシリーズ化してた、パソコンゲームをゲームブックに起しなおしたもの。
スクリーマーはグチャグチャのモンスターのグラフィックが素晴らしく、また敵キャラクターもパンキッシュでカッコ良かったですね。

当時はですねえ、ドアがアニメーション処理でスゥーと開く!ってくらいでみんな嬉しがったものです。
戦闘シーンがね、もうちょっとなあ(キャリーベイビー大嫌い!)・・・って部分はあるけれど、あのグチャグチャモンスター同時8色とかの制限ある中でよくできたものです。

スクリーマーはゲームブックが2種類あるのですが、こちらは東本昌平版ではないほう。東本昌平がキャラデザだった、って割と意外ですよね。315円。

「スーパーエンジェルズ」わたべ淳


わたべ淳といえば「遺跡の人」で話題になりましたが、では代表作「レモンエンジェル」の前後は何やってたの? といわれてもやっぱりなかなか出てこないのではないでしょうか。 僕もwikiで見て「そういえばこんな作品描いてたっけなあ」と、やっとこ思い出せたくらいです。

マンガ家という職種の辛いところはベテランになり円熟さがまして作品の幅が広がっても、それに伴いファン層も比例して広がるとは限らないことでしょう。
気がついたら歳を取るごとに連載ではない細かい仕事が増えだし、実録。実用・伝記・学習・児童マンガ・・・つまり物語やマニュアルをマンガに起したものを描くようになり、やがては消えてゆく・・・というか表層で追えなくなるのが実情です。

たとえばわたべ淳よりちょっと前に同じく集英社でデビューした石川サブロウ。
または佐藤智一。そのあとだと富沢順。
いまでもバリバリに連載持ってて作家活動も20年以上の大ベテランですが、そのベテランの作品、3人で5つ、ぱぱっと出てくる人は、なかなかのマンガ読みだと思います。
一般的知名度の低い大ベテランがとても多いのがマンガ界の特徴でしょうか。

わたべ淳もそんな感じで、レモンエンジェルで消えたわけではありません。 我々が追えていなかっただけで、作品たくさん残しているわけです。
今回の「スーパーエンジェルズ」もその一つ。

内容は女子プロレスがテーマ。
新人レスラーが成長していくまで・・・という一般的なものですが、修行時代の女子プロ選手の生活がホロリとさせます。 レモンエンジェルもマンガの方はそこまでエロくなく、どっちかというと思春期の女子の女子プロのマンガはなぜかいつも競争率が高く、 女子プロが出てくる・・・キャットファイトが出てくる・・・泥レスが出てくる・・・いや、泥レスは出てこないですね。

・・・というだけで熱烈なコレクターが多数存在。
この年代のヤンジャン新書ってすごい勢いで淘汰されているので、駄本と思われてるものこそいまのうちにレスキューしてください。シミあり。特価525円。

「無限の住人 音曲盤読本」

映画化の噂もあるむげ人の、イメージアルバムが出たときに販促用に配られたもの。
アフタ本誌では抽選だったとおもいます。
詩曲が独特な和製文芸メタル「人間椅子」がつけており、人間椅子と沙村広明の対談も載っています。

コメントをなぜか貞本義行が寄せているのですが、沙村氏がデビュー当時、 作者コメント欄に「俺の作品はアートだ」と述べていたことをややイジワルに触れる貞本氏。
自分も芸大出身で、画家を志しそれがいつのまにかこの業界に・・・という共通点にシンパシーを感じたとの旨。CD無傷。3150円。

「スヌーピーブックス75 弟はクールな二枚目、スヌーピー」

角川から出ていたのがスヌーピーブックスの最後期ナンバーというだけでもかなり出現度が低いのですが(集めてる人にとっては80番以降がコンプリート待ちのハズ)、 この巻は特にレアキャラクター、スヌーピーの弟マーブルスが登場するため人気の巻です。

兄のスパイク(寝ぼけ眼)はおなじみですが、弟のオラフ(ふとっちょ)は知名度がかなり低く、アンディ(長毛)とマーブルス(ぶち模様)は特にレアキャラで、 スヌーピーコーナー作るときには毎度このスヌーピーの兄弟をキャプションで貼り付けるのですが、こんなスヌーピーいたっけ!?っていつも話題になります。

マーブルスは兄弟の仲でもナイーブな性格で(スヌーピーの兄弟は意外にみんな繊細なのです)、スヌーピーとは相容れず・・・というのも切ないですな。1050円。
ちなみにスヌーピーには妹もいます。名前はベル(まつげが長い)。

「マッチョテイスト」オリジナル版

まさかマッチョテイストまで復刻され、しかもそれがコンビニに並ぶとは思わなかった。小池書林は侮れませんね。
この本はオリジナル版。
最初っから笑わす気マンマンだった復刻版くにくらべ、オリジナル版は笑わす気がない。クソ真面目にマッチョです。
「新しいことをやろうとはしてる」んだけどいかんせんグズグズしたカンジが出ていて、そこがイイ。2冊で840円。

「ロマノフ家の黄金」さいとう・たかを

作家的に言えばビッグネームであるにもかかわらず、当時の話題性や状況などから出版部数が絞られてしまっており、 当時の知名度が低かったからか復刊にも至らず、あとから手に入れようとすると難しくなる類の本は非常に多いです。
この本もその一つです。

「ロマノフ家の黄金」は平成3年に出たさいとうたかをの全1コミックスですが、掲載誌がコミック・ギガというドマイナーなせいか見かけません。
内容はゴルゴの経歴を追う名編「すべて人民のもの」(ゴルゴ81巻)と似ており、ロシア革命、レーニンやラスプーチンが登場。 ついでに言うと本編の絵も石川フミヤスなので主人公も太い眉毛でゴルゴと見まごう展開です。

同一テーマの「すべて人民〜」と「ロマノフ〜」はどちらが先に発表されたのかというと微妙で、どちらも平成2年ごろとほぼ同時期。
大ロシアの数奇な運命と、ゴルゴがロマノフ家の末裔かも?という壮大な歴史ロマン「すべて人民〜」を読んだ人はこちらも補完する意味で読むのをおすすめ。見返しシミあり。840円。

「8月の光」新井英樹

いわずもがなの新井英樹の初単行本。
いつになっても復刻される気配がありませんねえ。
「宮本から」の雰囲気がバッチバチ出てるのと、また1枚絵がしっかりと描かれていて、真夏の夕陽が部室に差し込む様子とか、乱闘シーンとかが印象的。2100円。

「東京SEX-Y倶楽部」相沢真理

「GTO」「仮面ティーチャー」の藤沢とおるは講談社でデビューする前に成 人コミックを描いていたのですが、その時代の唯一の単行本がコレです。 しかし今から見れば、成年というよりも青年マンガにエロがある・・・くらいのもの。

江川達也(というか「BE FREE」の)の影響がすごい感じられるのですが、時代的に仕方がないかもしれないですよね。
テレビに登場する姿でしか江川達也を知らない若者には分からないかもですが、80〜90年代の江川達也のブチ切れ具合はハンパなく、 多かれ少なかれヤンマガとスピリッツの青春マンガの作風に、未だに影響を与えつづけているくらいです。

そのためかギザギザに無軌道な若者ばかりが登場するのはいいとしても、暴力、とくに血しぶきスプラッタ描写が何故か頻出。
女の子の首は吹っ飛ぶわ、ゾンビは出るわ、バンパイアはでるわで、これは「藤沢とおるエロマンガ描いてた」というより「藤沢とおる、狂った青春スプラッタマンガ描いてた」と取った方が良いのかもしれないですね。

ここ3年探しててやっと入荷しました。まんだらけ初出品。3150円。

「Golden Sports Times」クリタキョウ/モリトシアキ

有名作家の知られざる一作をもうひとつ。
アフタヌーンで1年ほど連載されていた、スポーツを題材にした小話集「Golden Sports Times」。

絵を描いているモリトシアキは、旧SNK→現カプコン、飢狼伝説のキャラデザで有名な森気楼の漫画家時代のペンネームです。

森気楼氏がマンガを一作だけ描いてたという事実はGpara.comのクリエイター ズファイルの西村キヌの回にちょこっと触れられていたのみで、具体的なタイト ル名はけっこう長い間謎だったように思います。

しかし絵を見れば一目瞭然ですね。 こんなに外国人描くの上手い人いないですもん。
惜しむらくはこの本、スポーツを通して男の美学を描く・・・といったエピソード集のためか女性キャラがほとんど登場しないのです。

しかしそんなことは瑣末なことで、絵を描く人、CGに完全な信頼をおかず、筆力というものが最終的に人を感動させると信じる人は、テキストとして読んでおくことをおすすめします。1575円。

「攘夷幕末世界」森田信吾

日本各地に伝わる天狗伝承は、実は漂着した外国人ではなかったかとする説があります。鼻が長く顔が赤く背が高く、日本人には理解できない言葉を話す・・・という。わからなくもありません。

しかしは外国人はギョゴーッ!とグゲゲゲとわめくグチャグチャの粘膜系のバケモノで、 日本を手中に収めんとやってきた地虫の類だ!! 攘夷、攘夷だ! といった破天荒な伝承は幸いなことに日本各地には残っていなかった。
そんな説を唱えている本がこれ「攘夷幕末世界」です。

読んでるとつい「攘夷!攘夷!」と叫んでしまうほどムダにテンション高い本作。
まんだらけ全店でもセットがほとんどない(1巻はよく見つかるのですが2巻が無い)状況、また熱烈な探求もある逸品ですが、お祭りにガッカリさせることはしませんとも!
ちゃんとコンプレックス用に確保してあります! 3150円。

「ファック・アイ」沢木あかね

どんな本かというと美人姉妹の大泥棒・キャッツアイならぬ、美人怪盗・ファックアイが童貞を奪う・・・という何ともカンともなトホホなエロマンガ。

腰痛ぎみなので腰には柔らかい衝撃しか受けられないとか、自分は浪人が決まったのにマイミクの日記にはみんな大学のコトばかりうれしげに書いてあって暗くなるとか、 そういったブルーな気分を吹き飛ばすダメ加減です。315円。

「ウホッ!! いい男たち」山川純一

ふだんは在庫がまったくないのですが、年始やコミケ、GWなどわれわれにとってのイベントの直前になると、なぜか続々とそれにあわせたように入荷する、 本店にとっての守り神のような存在、それが「ウホッ!! いい男たち」です。
まあその守り神って、ツナギ着てベンチに腰掛けてるのかもしれんのですが・・・。

コラージュやネタで知った気になるのではなく、全571ページという大ボリュームの濃密さをまず味わってみては。
読まずして、wikiやまとめサイトの概略だけで知った気になるのは、けしていいものじゃないです。

このほかにももちろんいつもだったら見ないところを大量に用意して待っています。たとえば林田球「魔剣Xアナザー」あたりは複数用意。
今回はニューウェイブの棚の充実度も、ジャンプ黄金期〜現在人気の初版セットも、そして雑誌類も、穴がないほどの在庫をそろえています。
ただこの、テトリスでいうなら1本棒を3本待ってるみたいな精緻でカッチリ組みあがった棚も、お客様に見ていただかないとそれはただの本棚に終わってしまうのです。 精緻で繊細なモノは常に一瞬しか保てぬバランスのもとに成立しているのですが、そのはかないきらめきはだからこそ眩しいもの。
そして僕の揃えている本はその最高のバランスをグラグラと揺らす危うげな異分子。
テトリスでいうなら1本棒待ちのところにおりてきた「L」ともいえるものです。

コンプレックスにぜひご来店ください。

僕もときどき店にいますから、3階でウロウロしている太り的なものを見かけたら声をかけてください、

上記のものはすべて嵐の過ぎ去った4/6(日)に出します。

※この記事は2008年3月27日に掲載したものです。

(担当 岩井)

お問い合わせ (営業時間:12:00〜20:00)

まんだらけ中野店(詳しい店舗地図はこちら)
〒164-0001 東京都中野区中野5-52-15
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